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2018/06/06

MOVIE 「万引き家族」

Manbiki_kazoku_poster今年のカンヌ映画祭でパルムドール(最優秀賞)を受賞した、是枝裕和監督の最新作「万引き家族」。先行上映がされていたので、公開前に観てきました。

※内容に触れているため、未見の方はご留意ください


予告編はこちら。

あらすじは下記の通り。(Filmarksより)

高層マンションの谷間にポツンと取り残された今にも壊れそうな平屋に、治と信代の夫婦、息子の祥太、信代の妹の亜紀の4人が転がり込んで暮らしている。彼らの目当ては、この家の持ち主である初枝の年金だ。足りない生活費は、万引きで稼いでいた。社会という海の底を這うような家族だが、なぜかいつも笑いが絶えず、互いに口は悪いが仲よく暮らしていた。 冬のある日、近隣の団地の廊下で震えていた幼い女の子を、見かねた治が家に連れ帰る。体中傷だらけの彼女の境遇を思いやり、信代は娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく──。

観たあと、こんなにずっしりと来た映画は久し振りだった。
是枝監督のこれまでの作品、特に「誰も知らない」「そして父になる」からの流れが大きく合流したものだと言えよう。
社会の隙間で肩を寄せ合い、ひっそりささやかに生きている「家族」。彼らは血縁の家族ではないことが物語が進むにつれて少しずつ明らかになっていく。幼児虐待、非正規雇用、万引き、JKビジネス、不正受給といったニュースで頻繁に聞かれるキーワードが次々と登場人物のエピソードとして描かれる。しかしそれは悲惨な空気ではなく、淡々と、そういうことなのだ、と、肯定でも否定でもなく、彼らのありようのひとつとして見せられるのだ。

縁側で隅田川の花火を「聞いて」楽しむ様子。電車で海に出かけて波打ち際で手をつなぐ様子。そんな「家族」としてのほっとする光景のあとに、ほころびが始まり、やがて事態が急展開を見せる。

ケイト・ブランシェットが絶賛したという安藤サクラの「泣き」には本当に胸を鷲掴みにされた。こんな表現があるのか、と。

作品を観たというより、この家族と一緒の時間を過ごしたという感覚だった。世の中のいろんな出来事といろんな風につながりながら。見終わったあと諸々残る違和感を、私たちは決して忘れず捨てず、それを抱えながら、それについて考えながら生きていかなければいけないと心から思う。

関連リンク:

正しさの陶酔、揺さぶる「万引き家族」 角田光代さん

よく理解できないこと、理解したくないことに線引きをしカテゴライズするということは、ときに、ものごとを一面化させる。その一面の裏に、側面に、奥に何があるのか、考えることを放棄させる。善だけでできている善人はおらず、悪だけを抱えた悪人もいないということを、忘れさせる。善い人が起こした「理解できない」事件があれば、私たちは「ほら、悪いやつだった」と糾弾できる。なんにも考えず、ただ、ただしい側にいるという錯覚に陶酔することができる。そんな、シンプルで清潔な社会への強烈な違和感がこの映画から立ち上ってくる。

「invisible」という言葉を巡って——第71回カンヌ国際映画祭に参加して考えたこと——

「インビジブル ピープル」と審査員長のケイト・ブランシェットは授賞式の冒頭で口にした。その存在に光を当てることが今回の映画祭の大きなテーマだった、と。隣に座った通訳を介して日本語に翻訳してもらいながらだったので内容は大まかにしか把握できなかったが、その「invisible」という言葉だけはずっと頭に残った。確かに『万引き家族』で僕が描こうとしたのも普段私たちが生活していると、見えないか、見ないふりをするような「家族」の姿だ。その生活と感情のディティールを可視化しようとする試みが今回の僕の脚本の、そして演出の柱だったとケイトさんの言葉に触れて改めて思い出した。そして、そのスタンスは14年前の『誰も知らない』とも通底している——と、自分では今回の作品を分析していた。なので名前を呼ばれて壇上に向かいながら、このスピーチでは「invisible」なものについて触れようと考えていた。

『万引き家族』は、なぜカンヌ最高賞を受賞したのか? 誇り高い“内部告発”を見逃してはならない

この映画が注目を集めたことで、どうやらネット上の一部では「日本の恥を世界に晒している」などという揶揄があがったらしいが、そのような恥さらしな発言に目を向けるのは時間の無駄だ。工事現場で日雇いで働く父、クリーニング店で働く母、JK見学店でアルバイトをする母の妹、月6万円ほどの年金を受給する祖母。そしてどこか様々な感覚が麻痺してしまったかのようでありながら、時に無邪気な表情を見せる少年と、本当の両親からネグレクトされた少女。

 2004年に同じくカンヌを沸かせた是枝作品『誰も知らない』では母親から育児放棄された幼い兄弟たちが、孤独な少女と出会い、子供たちだけで生きていく様が描かれた。劇中で彼らがそのように生きていることを“誰も知らない”だけでなく、実際にあった事件が題材になっていながらも社会の誰もが彼らのような存在がいたことさえ知らなかったのだ。

 しかし、そう考えると『万引き家族』で描かれる一家は、劇中でこそ“誰も知らない”存在として密かに生きているわけだが、彼らひとりひとりが抱えている影は、ここ数年現実の世界の中で取りざたされつづけている社会問題そのもの。それを凝縮し、救済を求めた彼らが崩壊していくあまりにも残酷なプロットに、日本中の誰一人として見て見ぬ振りはできなくなってしまうはずだろう。


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