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2016/11/19

MOVIE 「この世界の片隅に」

Movie_corner_of_this_world話題の映画「この世界の片隅に」を観てきた。

「第二次世界大戦中の広島・呉で暮らす女性の日々の生活について描かれた作品」という前情報からは想像もつかない衝撃的な作品だった。こんなほんわかした絵で、まさかこんな胸をわしづかみにされるような世界が描かれるとは。

※内容に触れていますので、未見の方はご注意を。

予告編はこちら。

公式サイトにあるあらすじはこちら。

18歳のすずさんに、突然縁談がもちあがる。
良いも悪いも決められないまま話は進み、1944(昭和19)年2月、すずさんは呉へとお嫁にやって来る。呉はそのころ日本海軍の一大拠点で、軍港の街として栄え、世界最大の戦艦と謳われた「大和」も呉を母港としていた。
見知らぬ土地で、海軍勤務の文官・北條周作の妻となったすずさんの日々が始まった。

夫の両親は優しく、義姉の径子は厳しく、その娘の晴美はおっとりしてかわいらしい。隣保班の知多さん、刈谷さん、堂本さんも個性的だ。
配給物資がだんだん減っていく中でも、すずさんは工夫を凝らして食卓をにぎわせ、衣服を作り直し、時には好きな絵を描き、毎日のくらしを積み重ねていく。

ある時、道に迷い遊郭に迷い込んだすずさんは、遊女のリンと出会う。
またある時は、重巡洋艦「青葉」の水兵となった小学校の同級生・水原哲が現れ、すずさんも夫の周作も複雑な想いを抱える。

1945(昭和20)年3月。呉は、空を埋め尽くすほどの数の艦載機による空襲にさらされ、すずさんが大切にしていたものが失われていく。それでも毎日は続く。
そして、昭和20年の夏がやってくる――。

あちこちで激賞されているが、能年玲奈改めのんさんの声の演技がとにかくすごい。すずさん=のんさんになり、すずさんの少々ぼんやりした様子、おっちょこちょいな様子、美しいものに心奪われる様子、切り替えの苦手そうな様子、それでもひとつひとつを丁寧にやりとげようとする様子、そして、大事なものを守ろうとする様子、守れなくてもがく様子、さまざまな「様子」が独特の声と息づかいと空気でとてもよく伝わってくるのだ。絵と声がこんなにもシンクロしたアニメはめったに見ることがない。また広島弁がとてもチャーミングで、方言が似合う女優さんなのだなあと感心。

そして、物語を描く絵の美しいこと。絵そのものもそうだが、動きが実に美しい。特にすずさんが描く絵と、絵を描くときに入り込む空想モードの世界。哲といるとき描いた「うさぎの海」なんて泣きそうなくらいにステキな絵だ。(実際呉の先にある「忠海(ただのうみ)」という駅はうさぎがキャラクターになっている)

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すずさんの右手が記録するさまざまなこと。さまざまな思い。それをおすそ分けしてもらいながら進んでいく物語は、呉を襲った大空襲で大きく暗転する。空襲はとてもとても大切なものたちをすずさんから奪い、雑草料理でさえ鼻唄まじりで作っていたすずさんの表情から朗らかさは消えてしまう。

果てし無く続く空襲警報。屋根を突き破ってきた焼夷弾。何度も何度も防空壕で過ごす時間。そして、8月6日の朝を迎える。そのとき呉は。広島にいるすずさんの実家の家族は。

「ありがとう、この世界の片隅にうちを見つけてくれて」予告編でも流れるこのセリフをすずさんが言ってから、劇場の灯がつくまで、涙がずっと止まらなかった。エンドロールの最中も止まらない。そして同様のすすり泣きがあちこちから聞こえてくる。こんな映画は珍しい。

2年前に「瀬戸内マリンビュー」という観光列車に乗って、広島から呉を経由して三原まで行ったことがあった。あのとき見た湖のような瀬戸内海の風景と、潮風を思いだしながら、すずさんと一緒に呉の風景を眺めているような、そんな錯覚に何度も陥った映画だった。

なお私は原作は未読だ。これから読むのを楽しみにしている。原作ファンからも称賛の声が多いので、おそらく既に読まれた方も十分楽しめると思うが、未読の方はせっかくならそのままで映画に先に触れられるのもいいのではないかと思う。

※こちらのツイートの紹介マンガで作品の魅力がとてもコンパクトに表現されています

参考リンク:
映画「この世界の片隅に」 こめられた思い(NHK おはよう日本 特集ダイジェスト)

作品のもう1つの特徴、それは原爆や空襲で失われた広島と呉の当時の町並みを忠実に再現していることです。

#そう、平和記念公園のあるところは、当時は商店のある街並みだったのだ。そこから眺める広島県産業奨励館(現在の原爆ドーム)をすずさんはスケッチしていく。

『この世界の片隅に』が観客の心を揺さぶる理由 「感動」の先にあるテーマとは(リアルサウンド)

それでも、日本軍の戦局の悪化という史実に従って、ほのぼのとしていた作品の内容が、どんどん凄絶でシリアスになっていく。「戦争」という出来事が、暴力的な力によって、作品のジャンルそのものを捻じ曲げ、全く違うものに変えてしまっているようにも見える。牧歌的に描かれる愛らしく愉快なすずたちが、むごたらしい運命に翻弄されていく様子は、その生活が丹念にユーモラスに描かれてきたからこそ、胸をえぐられるような喪失感を観客に与える。原作同様に、この「落差」が作品の大きな仕掛けである。

 『嘆きの天使』という、1930年に撮られた、人間の狂気ともの悲しさを極限まで描くドイツ映画の名作がある。映画史上に残るいたましい光景が印象的なこの作品は、軽いお色気コメディーとして始まる。しかし、作り手による周到な誘導によって、観客は思いもよらなかった世界に運ばれ、心の準備もないままに打ちのめされてしまうのだ。そして、安心して見ていた前半部分すらも、異なる意味を持って立ち上がってくる。『この世界の片隅に』の衝撃もまた、このような作品構造からもたらされているといえよう。

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