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2015/08/31

BOOK 「地域ではたらく『風の人』という新しい選択」 田中輝美・藤代裕之研究室(編著)

地域ではたらく「風の人」という新しい選択この本は、久し振りに、ぜひいろんな人たちに読んでほしい、と強く思った一冊でした。

たとえば、地方大学や都市部の大学に進学して、就職をどうしようと考えている(特に地方出身の)学生の皆さん。
たとえば、「地方創生」に起死回生を賭けようとしている地方自治体の皆さん。
たとえば、「何か違う」「ここは自分の居場所じゃない」と思ってなんとなく悶々と日々を暮らしている人たち。

これを読むと、「こんな田舎で」「こんなに面白い人たちがいて」「こんなに面白いことをしてる」ということにおそらく大きな衝撃を受けます。そして、その彼らにもかつては様々な葛藤や挫折、困難があり、時には乗り越え、時にはいったん逃げて、やがていろんな人とのご縁を得てここに至っているのだということを知り、じわじわと力を得ることができるのではないかと。

その本は、山陰中央新報社の記者だった田中輝美さんが退社してフリーになりつくられた「地域ではたらく『風の人』という新しい選択」です。

この書籍はいろんな面で一般の書籍と違っているところが面白いです。

まず、製作に当たってクラウドファンディングで費用調達をしていること。

島根発ローカルジャーナリストの挑戦!"島根の面白い人"紹介本を作りたい!(FAAVO)

なんでも目標の30万円は24時間で達成して、最終的には300%以上の支援が集まったとのこと。すごいです。
(私もこちらに支援して、巻末にクレジットを入れていただき、完成書籍も送っていただきました。)

そして、執筆を田中さんひとりではなく、法政大学の藤代ゼミのゼミ生たちが担当していること。
彼らは地方出身者は少なく、ほとんどが生まれも育ちも首都圏。別に地方に興味があった訳でなく、むしろ「コンビニもないような田舎なんか嫌い」な方が多いくらい。そんな彼(女)らが電車一本逃すと4時間待つような島根の田舎に行き、ある意味ぶっとんだ活躍をしている人たちと会ってインタビューして記事を書く。都会育ちの二十歳そこそこの若者たちには聞いた内容が共感できなかったり、シチュエーションが想像できなかったり、消化しきれないことも多かったでしょう。でも「手練」のプロライターが書いたのではない、ある意味異質な学生が奮闘して書いたことで、この書籍は内容に普遍性を持たせることができているのではないかと感じました。(記事の最後に学生自身が書いてる後記が、どれもこれもとても面白かったです。)

さらに、登場人物全員が島根県(もしくは在住経験あり)の人たち、という点。
目次にはこのようにあります。

未来を変える人づくり    岩本 悠(島根県教育魅力化特命官)
帰れる場所をつくる     本宮理恵(横田高校魅力化コーディネーター)
ジモトをカッコ良くする   三浦大紀(シマネプロモーション社長)
ここは劇場、私は女優    三成由美(奥出雲町役場職員)
僕といれば奇跡に出会える  西藤将人(劇団ハタチ族代表)
田舎だとチヤホヤされる   FROGMAN(映像クリエイター)
僕はDr.コトーじゃない   白石吉彦(隠岐島前病院長)
人を生かし、生かされる   尾野寛明(エコカレッジ社長)

見出しを見るだけで、この人一体どんな人なんだろう、と気になってしょうがないです。

加えて、出版社が島根の地元のハーベスト出版という出版社であること。
指導教員の藤代さんのブログで、出版社の条件を

企画の趣旨を理解して、ただ本を出す、だけでなく一緒に本を売るところまで取り組んでくれるところ。できれば地方、島根の出版社が良い…

としていたらなかなか見つからなかったけど、ご縁があってハーベスト出版さんに決まったとのこと。

そんな様々なご縁と多くの人の手間隙と思いで出来上がったこの書籍。
出版社サイトにあるこの紹介が本当にその内容を的確に表現しています。

これまでのイメージを覆す、地方でも都会でもない、どんな場所でも面白いことを生み出す「風の人」を紹介。新しい働き方のヒントが詰まった一冊。面白いことはどこにいてもできる!

感心したのは、とても読みやすいこと。文章はもちろんのこと、行間や段落が適度で、まるでウェブを読むように読み進められるのです。本なんか字が詰まってて読みにくい、とこれまで敬遠してきた人たちでも大丈夫ではないかと思うくらい。でも読みやすいからといって軽いわけではなく、内容はずっしり濃厚。読みでがあります。このあたりは編集の妙なのでしょう。

地域に元からいる「土の人」に対する概念の「風の人」。今まではいかに「風の人」に住みついてもらうのか、というのが「土の人」の関心だったのではないかと思いますが、これからは住み着いてもらうことにこだわらず、行き交う「風の人」を受け止め、面白いことの起爆剤になってもらえる「土の人」がいる地域が生き残るのではないか。もしかしたら、地域のみならず、企業などの組織もそうではないのか。そんなことを考えた一冊でした。

※東京で開催されたローカルメディアイベントでサインをいただきました

Book_kazenohito

参考リンク:
『地域ではたらく「風の人」という新しい選択』の出版は、東京中心のメディアへの挑戦でもありました(ガ島通信)
#指導教員の藤代さんのブログ。この書籍ができる経緯が詳しく書かれています。

地域ではたらく「風の人」という新しい選択
田中 輝美 藤代 裕之 法政大学藤代裕之研究室
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いま、地方で生きるということ
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