MOVIE 「駆込み女と駆出し男」
大泉洋さんの主演作「駆込み女と駆出し男」をようやく見てきました。
※内容に触れているため、未見の方はご留意ください
映画.com掲載の作品概要は下記の通り。
井上ひさしの時代小説「東慶寺花だより」を原案に、「クライマーズ・ハイ」「わが母の記」の原田眞人監督が初めて手がけた人情時代劇。舞台は江戸時代の鎌倉。幕府公認の駆込み寺・東慶寺には離縁を求める女たちがやってくるが、寺に駆け込む前に、御用宿・柏屋で聞き取り調査が行われる。柏屋の居候で戯作者に憧れる駆出しの医者でもある信次郎は、柏屋の主・源兵衛とともに、ワケあり女たちの人生の新たな出発を手助けすることに。信次郎役に大泉洋。駆込み女に戸田恵梨香、満島ひかり。樹木希林、堤真一、山崎努らが脇を固める。
実にいい映画でした。久しぶりに、時代劇で「面白かった」と満足できる作品を見たような気がします。(「のぼうの城」以来かもしれません)
キャスティングの妙と、丁寧に作りこまれた世界、さすがは井上ひさし原作とうならせる言葉の贅を尽くした粋なセリフの数々、重層的、濃厚、美しい風景、人と人の織りなすあや、とヒットも納得できる出来です。5月16日封切りでまだかなりの映画館で一日何回もかかってるくらい、評判がいいということなのでしょう。
紋切り型ではない、「あたらしい」時代劇と言えるかもしれません。
登場人物が皆それぞれに色っぽいというか、大泉さん演じる信次郎言うところの「仇っぽさ」があるんですね。
特に忘れられないのが、満島ひかり演じるお吟が堤真一演じる堀切屋三郎衛門に向かってささやく言葉。
眉、目、鼻、口、顎・・・・・ そのどこにも強味(きつみ)と渋みがある言葉だけなのに、まるでその言葉が指になって、眉、目、鼻、口、顎…とそっとさすっているような色っぽさ。三郎衛門も言われながらまるでそっと触れられ続けているようなうっとりとした表情をしていて、こちらも見ていてぞくぞくと。
(そしてまたこの言葉は思いがけない形でもう一度聴くことになるのですが、それは見てのお楽しみということで。)
登場人物は皆、女も男もやむにやまれぬ事情を抱えながらそれぞれの生がはじける、陰と陽の照らしあいからふと生まれる深みのある表情が色気として匂い立ったのかもしれません。
あちこちで大評判の大泉さん。たしかにこの作品では、軽妙洒脱でどこか寂しそうな甘えん坊な様子やマシンガントーク、反射神経といった大泉さんの特徴がすべて役に嵌まっていて、代表作と言える作品になっていると思います。パンフレットに「人気・実力ともにトップ俳優」とか書かれているとなんだかむずがゆくなってしまいますが、「ベッジ・パードン」で共演した萬斎さんも「彼のいいところが全部出てるって感じ」とパンフレットの解説でおっしゃってるので、素直に喜ぶことにします。
そう言えばテレビ番組で、一番最初に撮ったのが、キムラ緑子さん演じるお種との布団部屋のシーンだったと言ってました。テンポよいセリフの応酬のシーンで、綿密に稽古しておきたい大泉さんに対し、「なんでこんなに稽古するの」と途中でイヤになる緑子さん、という状況だったそうで、映画を見ながら「あーこのシーンか」と納得したり。
樹木希林さんの存在感、尼寺の尼僧たちのどこか浮世離れした美しさなど見どころは満載ですので、いろんな形で楽しめると思います。リピーターが多いというのもわかるような。
予告編はこちら。
スペシャルディレクターズカット予告。個人的にはこちらの方がかっこよくて好みです。
パンフレットも丁寧に作られています。最近は公式サイトに書かれているテキストと写真を紙にしただけ、みたいなものをパンフレットと称して売られていることもありますが、この作品ではそんなことはなく、江戸時代を専門にしていらっしゃる法政大学の田中優子総長や近世ジェンダー史を専門とする中野節子先生など歴史的背景もしっかり押さえたレビューを載せ、江戸時代の離婚事情や縁切りについて詳しく解説し、鑑賞後も作品世界をより深く楽しめるつくりになっています。久しぶりにしっかりしたパンフレットでした。
今年上半期の邦画でかなり上位ランクにくる作品だと思います。未見の方は今のうちにどうぞご覧になってみてください。
参考リンク:
駆込み女と駆出し男 特集(映画.com)
#かなり詳しく丁寧に書かれていますがネタバレはなし。
大泉洋、『駆込み女と駆出し男』興収10億円突破に満面の笑み(ニュース@ぴあ映画生活)
大泉は興行収入10億円突破に満面の笑みで、客席を練り歩き、大入り袋を手渡す。数字上だけでなく、観客の満足度も高く、大泉の元にもファンから多くの感想メールが届いているよう。「とにかく私はほめられるのが好きなので、寸暇を惜しんでみなさんからのメールを読んでます!」とご機嫌だった。
樹木希林、人生楽しむコツは? 「人や世間と比較しないこと」と屈託ない笑顔(cinemacafe.net)
本作が上映されたトロント国際映画祭から帰ってきたばかりの原田監督に対し、樹木さんは「あちらでの映画の評判はどうでした?」と現地の反応に興味津々。さらに「この映画はリピーターがたくさんおられると聞いたんですけど、監督、どう思います?」「私もそう思うわ。でも題名が長くて、覚えられないのよねえ」と自由なペースで、舞台挨拶を進行させ、観客による写真撮影も「悪用されるわけじゃないし」とあっけらかんと許可を出した。
#音楽担当は「マッサン」の富貴晴美さんです
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