BOOK 「右手をご覧くださいませ」 ヤサカ観光バス株式会社
「京都のバスガイドさんたちに引き継がれてきた虎の巻に新たな情報を加えて再構成した、新しい京都ガイド」(出版社サイトより)があると知り、それは面白そうと読んでみたのが「右手をご覧くださいませ: バスガイドとめぐる京の旅」です。
「3種類ある教則本をもとに、洛中の世界遺産▽東山▽清水寺周辺▽歴史の舞台▽嵐山・嵯峨野-の5コースを、車内アナウンスのような語り言葉と写真、地図で紹介」(京都新聞記事より)しているこの本。本当にガイドさんつきの観光バスに乗っているような気分になりながら読み進めました。
本書で紹介されているコースはおそらく定番中の定番コース。普段京都に行くときは、自分の興味関心だけで歩きますので、実はあまりこういうルートでは回らないのですが、おそらく修学旅行である程度似たようなルートでガイドさん付きのバスで回っているはず。なのですが、ほとんど覚えていなかったことに自分自身愕然としてしまいました。見ているようで見ていない、聞いているようで聞いていないんですよね、人間って。
あと、自己流旅行というのも妙ですが、何度か足を運んで知ってると思ってる場所も自分の記憶の中では点と点になっていて、実は面としては捉えてなかったということも、本書を読んで強く実感。こうやって「案内」してもらえると、こことここはこういう位置関係だったのか、とか、こことここは実はこんなに近かったのか、離れていたのか、またこんな歴史の舞台になっていたのか、といったことを知ることができて、とても勉強になる一冊でした。
それぞれの章のおわりに、「バスガイドトリビア」としてガイドさんならではのノウハウやエピソードなどが書かれたコラムがあるのも新たな発見があって興味深いし、うしろをふりかえってほしいときは「おそれいりますが」と必ず入れていたりというバスガイドさんの言葉遣いに改めて感心したり。
京都新聞の記事には社長さんが「できればあまり公開はしたくなかった」とおっしゃっていた、と書かれていますが、この内容を人に聞かせるように「話す」のはまさにプロの技。以前「今夜も生でさだまさし」で試しに構成作家の井上さんがハガキを読んでたことがありましたが、さださんが読むのと全然違って、失礼ながらあまり面白さが伝わってこなかった(井上さんごめんなさい(^_^;))のにとても驚いたことがありました。そのくらい、同じ言葉を使ってもプロの「伝わる」話し方というのは違っていて、ガイドさんたちはまさにそのトレーニングをされたプロのみなさまなのだと思います。
また、出版社の淡交社さん、あまりなじみのないお名前だったのですが、「茶道美術図書出版」の会社なのですね。たしかにウェブサイトを見ると茶道に関する書籍・雑誌がずらりと並んでいますが、京都・観光文化検定試験の公式テキストブックも出していらっしゃるようなので、地元のご縁で今回の出版につながったのかな、なんて勝手に想像したり。
個人旅行も楽しいけれど、たまにはこんな風に、詳しい方にわかりやすく解説してもらいながらの旅もいいかも、と思う一冊でした。
参考リンク:
バスガイドの虎の巻、京都案内本に 門外不出の内容(京都新聞)
京都のバスガイドたちによる観光案内本「右手をご覧くださいませ バスガイドとめぐる京の旅」が出版された。ヤサカ観光バス(京都市南区)の社内教則本をもとにした異色の観光ガイド。乗客への語り口調そのままにつづられ、まるで観光バスに乗って旅しているような気分にさせてくれる。教則本は同社の新人バスガイド養成用で、京都の名所の由緒から和歌、地域の伝説まで豊富な話題で乗客を飽きさせない工夫がされている。約60年のノウハウが詰まった「門外不出」の内容だけに、「できればあまり公開はしたくなかった」と、粂田晃稔社長(42)は打ち明ける。
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