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2015/01/14

BOOK 「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている──再生・日本製紙石巻工場」 佐々涼子

紙つなげ!  彼らが本の紙を造っているHONZという書評サイトがある。昨年の夏、そこで相次いで書評が掲載された本があった。どれもびっしり書き込まれた、アツい書評。それらはこの「紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている」についての書評だった。

出版社の早川書房のサイトに掲載されている紹介は以下の通り。

紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている──再生・日本製紙石巻工場

東日本大震災で被災した日本製紙石巻工場。出版業界を支えていたその機能は全停止し、従業員でさえ復旧を諦めた。しかし工場長はたった半年での復興を宣言。その日から石巻工場の戦いは始まった。開高健ノンフィクション賞作家による衝撃のノンフィクション!

HONZで最初に目にした書評はこちらだった。

東北が日本を支える。『紙つなげ!彼らが本の紙を造っている』(野坂 美帆2014年06月27日)

8号抄紙機の復旧、石巻工場の再生の物語がその後どうなったのか、今ここでご紹介するのはたやすい。しかし、止しておきたいと思う。最初から、石巻工場で作られたこの本の紙、一枚一枚をめくりながら、この物語を辿り、その結果を知ってもらいたいと願うからだ。石巻の物語を石巻の紙で読んでもらいたい。指で、匂いで、五感のすべてで石巻の紙を感じ取ってもらいたい。あの日、日本中が東北を支えたいと願った。だが、東北にはプライドをかけて日本を支えようとする人たちがいた。石巻工場は、プライドをかけて日本の出版を支えた。

他にもこれだけある。

『紙つなげ!』2014年上半期最高の社会派感動ノンフィクション(成毛 眞2014年06月24日)

つなげ!つなげ!『紙つなげ!』たすきを渡し、思いよ届け!(麻木 久仁子2014年07月03日)

行ってきました、日本製紙石巻工場! 『紙つなげ!』(足立 真穂2014年08月13日)

どれもボリュームのある、非常に密度の濃い、熱量の高い書評。(「行ってきました、日本製紙石巻工場!」は現地訪問記でもあり、文中に出てくる8号機、N号機の実物の写真も。)
遅ればせながら実際手に取って読んでみて、こういう書評を書きたくなる気持ちがわかったような気がする。と言うか、書かなきゃ、伝えなきゃ、という気持ちにさせる一冊なのだ。

とは言えこれだけの名文が並ぶと、書評などおこがましくてとても書けない。以下はこの本に出会って自分が感じたことのメモ程度とお考えいただきたい。

まず、誰もが書いているが、ここまで出版に使われている印刷用紙がこの工場で作られているなんて知らなかった、ということ。それも、ここまで用途に合わせた多様で高品質の製品を作られていたなんて。

最初に再稼働した8号抄紙機リーダー、佐藤憲昭氏が文中でこのように語っている。

「文庫っていうのはね、みんな色が違うんです。講談社が若干黄色、角川が赤くて、新潮社がめっちゃ赤。普段はざっくり白というイメージしかないかもしれないけど、出版社は文庫の色に『これが俺たちの色だ』っていう強い誇りを持ってるんです。特に角川の赤は特徴的でね。角川オレンジとでも言うんでしょうか」(p.145)

「紙にはいろんな種類があるんだぞ。教科書は毎日めくっても、水に浸かっても、破れないように丈夫に作られているだろ?コミックにも工夫がいっぱいあるんだ。薄い紙で作ったら、文庫本の厚さぐらいしかなくなっちまう。それじゃあ子どもが喜ばない。手に取ってうれしくなるように、ゴージャスにぶわっと厚く作って、しかも友達の家に持っていくのにも重くないようにできてる。これな、結構すごい技術なんだぞ」
(pp.146-147)

確かに言われてみると、出版社によって文庫本の紙は違うな、というのは薄々は感じていた。めくったときの感触とか、紙の立ち具合とか。でも色までがそんなに違うなんて正直気づきもしなかった。
そして、あんなにお世話になってきたコミックの印刷用紙。厚みがあってでも軽いあの紙はそういう意図で作られていたのかと、恥ずかしながら初めて知った。

石巻工場の数奇な運命についてもこのように書かれている。

「日本製紙石巻工場は、いくつもの合併を経て現在にいたっている。 (中略) 1936年、この東北工業株式会社は、昭和恐慌や昭和三陸大津波により疲弊した東北地方を救済し、経済振興を促進することを目的とした東北興行株式会社法に基づいて設立されたつまり、石巻工場はもともと津波で被災した地を支えるために、建設されたものなのだ。」(p.114)

そんな工場が津波に襲われ、再起不能かと思われるダメージを受ける。
日常の中では工場の存在をどこか疎ましく思っていた人が、震災で操業が止まった工場の姿に胸を痛め、ふたたび上がった水蒸気に嬉し涙を流す。そんな象徴的な存在であることを十分認識していた工場長が、まだボイラーに火が入らず白煙を挙げられない煙突に挙げたこいのぼり。

そして、実際に震災と津波のあの日あの時どう過ごしていたか、その後をどう過ごしたのかという、リアルで生々しい記録。それもおそらく話せる範囲でああだったのだろう。あの裏にどれだけの口にするのが難しい出来事があったのか。報道されていなかったが商店や自動販売機は強奪に合っていた。電気も電話も通じない中で警察を呼ぶことができないエリアは治安の悪化が起き、日常的に窃盗をしていたとは思えない人たちが集団になって押し入り、現金や商品、食料を奪っていくことは現実に起きていた。居酒屋店主や社員たちの証言の一部として語られている出来事は、災害時のリスク事項として認識されておくべきだろう。大半が「あの震災の中でも秩序を保った日本人」だったのだろうが、中にはこういうことも起きうるのだということを。そしてその一方で少しでも食料や飲み物、居場所や衣料を融通し助け合った人たちが大勢いたということも。

軸になる物語は8号機、そしてN号機の再稼働に向けた話だが、そこに横糸のように野球部と居酒屋店主の話が入る。様々な角度から日本製紙石巻工場が地域の中でどんな存在だったか、あの震災がいろんな人たちにどんなインパクトがあって、そこからどう再起してきたかということを浮かび上がらせている。

この本を読み進めるうちに、おそらたいていの人は間違いなく「じゃあ今読んでるこの紙はどんな種類のものなの」と思うだろう。私は思った。そしてどこかに記述があるのでは、と期待したら、やっぱりあった。

【使用紙】 本文:オペラクリームHO四六版Y目58.5kg(日本製紙石巻工場 8号抄紙機) 口絵:b7バルキーA版T目52kg(日本製紙石巻工場 8号抄紙機) カバー:オーロラコートA版T目86.5kg(日本製紙) 帯:オーロラコート四六版Y目110kg(日本製紙)

ひっそりと、でも誇らしげに、「石巻工場の紙ですよ」と。
口絵に使われている「b7バルキー」は再稼働後8号の新作として開発されたと本文でも紹介されている。

口コミで良さが伝わり、様々な雑誌のアクセントページや写真入りの書籍に使用され ている。これが現在、8号で一番生産されている紙となっている。(p.235)
そうか、こういう紙なのね。そっと撫でてみた。

ところで、私はここ2年ほど、新刊を紙で買っていない。kindleアプリで読んでいる。Amazonでこの本のページにある「このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。 」をクリックしながら、「この本を読んでここをクリックするのか」と自分自身に苦笑した。しかし正直今紙の本を家に増やすことは余程のことがない限り難しい。これは私だけのことだとも思えず、書籍を「紙」として持つというのはもしかしたらとても「特別」なことになり、図書館でしかそれを見れなくなるなんてことも起きかねない。

工場としては操業を再開した日本製紙石巻工場だが、出版や印刷をめぐる状況は震災時よりさらに悪化しているかもしれない。ノスタルジーを持つだけでなく、この高度な技術が紙というプロダクトに留まらず文化を伝える何かに活用されていくことを心から願う。

参考リンク:
震災後の印刷業界 – 印刷用紙の不足 日本製紙グループ(p-lines.info 2011/05/18)

岩沼工場は新聞紙など 勿来工場はカーボン紙などの抄造をしていると思います
こちらは再稼働しているということで
問題は石巻工場ですね
こちらは大工場で生産品目も多種にわたっていました
上質紙 中質紙 コート紙 書籍用紙 色上質紙 情報用紙などなど…

ただし 日本製紙グループでは

日本製紙の石巻工場は、津波により壊滅的な被害を受けましたが、
2007年11月に稼働した最新鋭大型「N6マシン」はじめ、
2階の抄紙機は、本体がほぼ無傷で生産再開をめざすとの事です。


という心強い情報も見つけられました

震災後の印刷業界 – 印刷用紙の不足 三菱製紙(
p-lines.info 2011/05/18)

三菱製紙の場合は
八戸工場が塗工印刷用紙 非塗工印刷用紙 高級白板紙 特殊白板紙 PPC用紙など
出版関係に一番関係する生産拠点が未だ未稼働

主要拠点・工場一覧 三菱製紙株式会社 web

また 稼働状況の進捗は今月中に発表されるだろうが
一応の所5月中には再稼働の見込みという事だ

三菱製紙というと事務系の特殊紙が浮かぶのだけれど
(トレーシングペーパー等)
普通紙も実は多く
パールコート(A2コート)やニューVマット(A2マットコート)などなど…

安定供給が出来るようになるには
もう少し時間がかかるのかも知れないですね

しかし三菱製紙の凄い所は
自家発電システムの復旧を抄造マシンの復旧より先に進めているという事
今後 万が一電気が止まる様な事があっても紙は自社電源で生産出来るし
おまけに周辺に電力供給するというのですから素晴らしい

その考え方には共感させられました
(製紙メーカーっていうよりはやっぱり商社っぽい)

震災後の印刷業界 – 印刷用紙の不足 王子製紙 北越紀州製紙 大王製紙(p-lines.info 2011/05/19)

しかし この3社は3月中に殆どが運転を再開させている
震災当初は情報が少なかったため
各企業とも最悪の事態を想定しての再開見込み発表であったと思われます

状況がつかめてからの復旧は三菱製紙 日本製紙に比べれば
かなり早かったという事です


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