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2014/10/15

MOVIE 「ぶどうのなみだ」

Budou_quint10月11日に全国公開となった「ぶどうのなみだ」をシネクイントで見てきました。

※内容に触れていますので、未見の方はご注意を。

公式サイトでは、こんな風にあらすじをご紹介。

北海道・空知。兄のアオは葡萄を育てワインをつくり、年の離れた弟のロクは父が遺した小麦を育てている。一度は夢を追って東京へ出たアオ。今は故郷に戻り、〝黒いダイヤ〟と呼ばれる葡萄ピノ・ノワールの醸造をくりかえしているが、なかなか理想のワインはできない。そんなある日、キャンピングカーに乗ったひとりの女性エリカが、突然ふたりの目の前に現われる。おいしい料理を作り、誰よりもおいしそうにワインを飲む彼女は、いつしか小さな町の人々にとけこみ、アオとロクの静かな生活にも新しい風を吹き込んでいく―。

「しあわせのパン」の監督による北海道シリーズ第二弾。
今回も美しい北海道の風景、美味しそうな食材に満ちた、少し浮世離れした設定の中で話が進んで行くが、話はこのあらすじから受ける印象よりずっと重く沈んだトーンが続いて行く。

それは大泉洋さん演じる主人公アオがどこまでも他人を拒んでいるからだ。父親との関係に傷つき、夢破れて傷つき、人との関わりを断ってピノ・ノワールとワインづくりに没頭する。しかしそれが思ったような出来にならず、さらに苛立ちはつのっていく。空知に帰って来てから彼は一度も笑顔を人に見せていないのだ。

不気味なくらいにどこまでもアオの不機嫌を受け止める弟のロク。彼もまた父親から受け継いだ小麦畑に執着する。ただ、ロクは父親が亡くなってしまったあと彼らに支えられたということで周りのひとたちとの関わりも持ち続けていて、ひたすら孤立するアオと彼らの間に挟まる格好になってしまう。気持ちを分かち合いたい一番身近なはずの人が一番遠い、そんなロクの孤独感。

母親が自分の名前を「荒野」の意味でつけた、と思っていたエリカ。父親に音楽コンクールのトロフィーを捨てられたと思っていたアオ。思い違い、すれ違いから頑になった心がふれあい、エリカのある行動をきっかけに、アオはひとつの決心をする。そうして、ゆっくり、春になって「ぶどうのなみだ」が流れ出すように、硬く冷えた心はほどけてやがて流れ出して行く。

ラストで何度も繰り返されるグラスを合わせる音は、前途を祝うクラッカーのような祝祭音のようでもあり。

炭鉱で栄え、それが廃れてしまった空知という地域。黒いダイヤと言われた石炭の代わりに、黒くつややかに輝くピノ・ノワールが大地に実っていく。そのぶどうが一度収穫されて「死んで」、発酵してワインとして新しく生まれる。喪失と再生。その希望を日々の営みの中に見出していく。

夕暮れ時の緑色のぶどう畑、その向こうに広がる黄金色の小麦畑。まるで日本でないような、荘厳な美しい風景。あの光と空気はまさに北海道でしか感じられないものだと思う。

北海道の美しさ、厳しさ、あたたかさ。そして美味しいもの、素敵な工芸品の数々を、ぜひこの映画で追体験いただき、もしよかったら季節のいい時にご訪問いただけたら。

※ロケ地として「特別協力」がクレジットされてるのが「空知総合振興局、岩見沢市、三笠市、滝川市、栗山町、南富良野町、札幌市」でした。

予告編はこちら。

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