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2014/10/14

BOOK 「ウイスキーと私」 竹鶴政孝

ウイスキーと私朝ドラ「マッサン」のベースを辿る読書。先週はリタさんからの視点をもとにした小説「望郷 (角川文庫)」を読んだので、今週はマッサン側の視点「ウイスキーと私」を。

マッサンこと竹鶴政孝氏が日本経済新聞「私の履歴書」に執筆されたコラムをもとに、「ウイスキーとダンディズム 祖父・竹鶴政孝の美意識と暮らし方」を出されたお孫さんの孝太郎さんが内容の監修を行って脚注をつけ、一点だけ注釈ではおさまらない歴史上の事実との相違について補足を書かれている。

本文は妻リタについてもいくつかの章で書かれているが、大半はウイスキーづくりそのものの波瀾万丈の苦労談。それでも湿っぽくないのは「本物のウイスキーづくりをきっとやりとげてみせる!」という強い信念と本人のキャラクターなのだろう。昭和初期という、まだ日本社会そのものが整い切っていない中で「日本で初めて」のものを創り出すのには、こんなにも多くの人達がいろんなことを工夫しながら実現させてきたのだな、というところに感じ入るものがあった(ウイスキーのための酒税のかけ方に大阪税務監督局と知恵を絞ったり)。

「望郷」では大阪での暮らしについても多くのページを費やしているが、「ウイスキーと私」では大阪の話はあっと言う間に終わってしまってすぐに余市へ。政孝氏にとっては余市でのウイスキーづくりこそが自分の人生の本丸だったということなのだろう。

「望郷」と明らかに違っていたのは、リタの妹エラとの確執のこと。「望郷」では末の妹キャシーは二人の結婚の理解者として母親との仲介をしてくれたが、エラとは和解できないままスコットランドを離れてきたということになっている。ところが「ウイスキーと私」ではむしろエラが理解者となり母親との仲介をしてくれた、とあり、このあたりは「望郷」のストーリーを深めるためのフィクションとして事実をアレンジをしたのかな、と想像。

巻末付録のコラムで政孝氏は「ウイスキーは基本的にその人の好きなように飲んだらいい」と言いつつ、「毎日飲むような人にはウイスキー1に水2で割った水割り」を薦めているのも興味深い。8~9℃の水で井戸水がベスト、とのこと。あんまり冷やしてはせっかくの香りが消えてしまうのでオンザロックはあまりお薦めではないそうで。
印象的な言葉として「イントキシケイティング・ディグリー(Intoxicating Degree)」というものがあった。これは「致酔度」のことで、「酒を飲むときには、いま自分はどのくらいの致酔度にあるか、“今日は少しディグリーが高くなってきたな”と思ったら、少し休めばいい。」「自分の楽しめる範囲で、いろんな酒を飲むのは大賛成である」と書かれている。まさに大人の飲み方、ウイスキーのみならず酒を愛する政孝氏ならではの言だと思う。「今日はディグリーが…」って、今度使ってみたいかも(どこで?)。

他にもウイスキーそのものの歴史や作り方についてもとても勉強になり、日本で洋酒づくりに挑戦した人々の一人として、上越で国産ぶどうによる国産ワインづくりに人生を賭し「岩の原ワイン」を作った川上善兵衛氏について触れてくれているのも嬉しかった。また余市のリンゴは戊辰戦争で負けて藩士流罪の名目で入植させられた会津藩士たちが原始林を開拓して植えたもので、これが日本初のリンゴ栽培だったことなども初めて知ったことだった。

コンパクトだがとても濃厚で読みごたえのある一冊。「マッサン」好きの方、ウイスキー好きの方はこの機会にどうぞお手許に。

参考リンク:
ニッカウヰスキーと私

#ニッカ公式サイトに掲載されている、政孝氏とリタさんの養子・威氏の回顧録。こちらもボリュームたっぷりで読みごたえがありますが、実に面白いです。

会津藩士とリンゴ (余市町)

余市を代表する産物と言えば「リンゴ」というのが北海道人の連想ですが、リンゴが余市に根付くまでには、明治初期に本町に移住してきた会津藩士の苦難の歴史がありました。 
(このコーナーは、福島県会津若松市とのホームページ相互リンクを記念して掲載しました。)

岩の原葡萄園の歩み

妙高連山のすそ野がなだらかに日本海に接する「越後・頸城(くびき)平野」。その頸城平野にあり、かつて城下町として栄えた越後・高田(現上越市)に岩の原葡萄園はあります。この葡萄園の歴史は、1890年(明治23年)創業者川上善兵衛が自宅の庭園に鍬を入れ、葡萄園を作ったところから始まりました。以来3世紀に亘り、善兵衛がぶどうとワインにかけた情熱を引き継ぎ、高品質の国産ワインを造りだすための努力を惜しむことなく続けています。

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