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2014/10/01

BOOK 「少年たちの贖罪: 罪を背負って生きる 」 青島多津子

少年たちの贖罪: 罪を背負って生きる先日ご紹介した「謝るなら、いつでもおいで」をAmazonで見ていたら、「この商品を買った人はこんな商品も買っています」に出てきたのがこの「少年たちの贖罪: 罪を背負って生きる」だった。

書籍の概要は出版社サイト

重大事件を犯してしまった少年は、事件後、 何を思い、罪の重さをどう受け止めるのか。 長年寄り添う精神科医にみせた彼らの素顔とは。

と紹介されている。
筆者は青年海外協力隊(マラウィ国・トンガ王国)、関東医療少年院、府中刑務所、JICA国際協力機構などを経て、現職は児童自立支援施設国立きぬ川学院非常勤医師をつとめる精神科医。罪を犯してしまった少年たちがどのようにその罪と他者に与えた影響を理解し、その後どうそれを贖って生きていくのか、精神科医としてどう関わっていくのか、そういったことがこの本の主旨だ。

重大な少年犯罪は社会的影響が大きいこともあり、性別に関係なく「少年」「彼」と呼称して描かれる触法少年たちとの日々は、事件そのものはもちろん起こすべきでないとしても、彼らがいかに「当たり前の家族」から逸脱した環境で育ち、得られるべきサポートを得られず孤独に追い込まれて歯止めが効かなくなっていったのか、その重さをようやく自覚したとき精神を保つのが大変か、そんな彼らを「決して見捨てない」人としてどう会話をして見守るのか、といったことが(プライバシーに配慮した改変をしつつ)出来事を積み重ねて表現されている。

「贖罪」は決して容易にできるものではない。加害者からの謝罪を拒む被害者家族も多いという。彼らにとって犯罪は「忘れてしまいたい」過去であり、どういう形でも加害者との関わりは一切絶ちたいのだ。

彼女がそんな仕事をしていることをどうやって知るのかわからないが、「被害者家族の気持ちを理解してほしい」という無記名・宛て名なし、切手も貼られていない手紙が自宅の郵便受けに入っていたことがあったそうだ。加害者の更生を支援しているというだけで、加害者を無条件で支持していると感じられるのかもしれない。実態はそんなことはなく、いかに彼らに自らの起こしたことの重大さを認識し、償いの重みに耐えながらこれからの人生を真っ当に生きていくのかを支援するのだから、社会との窓口として限りなく公正であることが求められる仕事であろう。

専門家としての厳密さと、ひとりの人間としての心の揺れや迷いを時には正直に吐露しながら、こんな風に彼らに犯罪をさせてきた社会や大人たちに「ちゃんと彼らを見て」とつきつけているようにも感じた。触法少年たちは決して異次元に住む別の人種ではない。私たちは運の良さが重なって、たまたま彼らの方に転ばなかっただけなのだ。あの少年たちは、もうひとりの私なんだと。

この本に描かれるような少年たちが少しでも少なくなるにはどうしたらいいのか。簡単に答えが出る話ではないが、どうよりよく世の中や周りの人たちと関わっていくのか、そういうことなのかもしれないと思う。

援助専門職以外の皆様にもぜひご一読いただきたい一冊。

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