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2013/01/29

BOOK 「中の人などいない @NHK広報のツイートはなぜユルい?」NHK_PR1号

中の人などいない@NHK広報のツイートはなぜユルい?今や企業公式アカウントの代名詞となっている @NHK_PR さん。
割と早い時期からフォローしていて、ファンになっていた私としては、そのPRさんがツイッターについて本を書いた、と聞いて読まないわけにはいかないだろう、ということで読んでみた。

出版元である新潮社のサイトにはこのように紹介されている。

大人気のツイッター・アカウント「NHK広報」の人気の秘密に迫……る?

お堅いNHKらしからぬ「だめキャラ」で、公式ならぬ軟式と呼ばれる@NHK_PR1号。さかなクンに「さん」を付けなかったと不思議な謝罪をしたかと思えば、緊迫の大震災渦中ゆるツイート続行での炎上に「不寛容とは戦う」と一本気。多くのお叱りを受けながらも、フォロワーを魅了するつぶやきに秘められた真意とは?


時間の流れに沿って、思い出話を語りかけるような口調で書かれているので、NHK_PRとしてつぶやきだす前に別のアカウントでオフ会に出たりしていたとか、キャラ設定が「NHK+白石さん+のだめちゃん+バカリズム」とか、なぜアイコンは3時なのかといった裏話、また修造botと会話していたとか「はやぶさ」帰還中継にまつわる集中批難など、見覚えのあるエピソードにうなづきつつ読み進めると、あっと言う間に読み終えてしまったが、軽くてゆるいようで実は骨太できっちり意志を持っている、まさにNHK_PRさんのツイートそのものの本だった。

トラブルや問題がある度に「自分はどういうつもりでツイッターを使うのか」「NHKにとってこのツイッターアカウントは何なのか」という原点に帰って、「たくさん会話をする」ことに徹した結果、「みんながNHKの当事者なんだ。だからこそ、みんなの考えや、言っていること、どんなことに興味を持っているのかを、出来るだけたくさん知ることが必要」という思いに行き着く。

そんな軽いタッチの文章が続く中で、異彩を放つのが「3.11--地震のこと」の章だ。
ここではたまたま事務所で企画書執筆中に地震に遭遇したPRさんが、その後どうツイッターでふるまったかについて詳細に書かれている。PRさんは阪神大震災も経験しているので、震災がどういうことをもたらすか、どういう情報が必要となるかということを実感として知っていた。またちょうどスマトラ沖地震の津波についての番組も作っていて、津波の恐ろしさも知っていた。だからこそこの瞬間に何を伝えなければならないか、何を見なければならないかを体感として知っていて、都度情報を出していく。他のアカウントからの有用と思われる情報、日本語以外の言語への翻訳、そして中学生が流していたテレビ画面のUstream中継のリンクのリツイート。放送局がネットでの違法配信を認める発言をするなんていうのは平常ではありえないことだが、せめて少しでも情報を伝えるために、と「私の独断なので、あとで責任は取ります。」と腹を括ってリツイートをしたのだ。結果として映像のネットへの再配信を局としてもやることになり、他の民放にもその取り組みは広がったのだった。

さらにすごいのは震災発生後4日目に「今後、出来る限り日常的なユルいツイートをします。ご批判もあるかとは思いますが、ご理解ください」とツイートしたこと。たしかにあの頃はタイムラインは殺伐としていて、みんなが息をひそめてまるで戦時中の灯火管制下のようになっていなければいけないような空気で、正直息苦しかった。テレビをつけてもCMはなくなり、公共広告機構だけ。「ぽぽぽぽーん」くらいしか明るい空気は流れてこなかった。そんな時に、「ローギアで、遠い遠い道のりをゆっくりと進んでいく覚悟が必要」なことを肌で知っているPRさんは、いつまでも非常事態状態で息切れすることなく「日常に戻る」大切さを表すために、自ら舵を切ったのだった。

おそらく想像のつかない数の批難が寄せられただろう。そこに対し毅然とこう言った。

「不謹慎ならあやまります。でも不寛容とは戦います」


このツイートはリアルタイムで見ていたが、ああこの人は本気なのだ、長い長い闘いをしていくために腹を括っているのだ、と深く感動したことを覚えている。

日常に戻ったNHK_PRさんのつぶやきに、少しずつ被災地からお礼が寄せられてきたという。おそらく被災地以外でも救われた気持ちになった人は多かったはずだ(私もその一人)。

企業広報アカウントがどうやってコミュニケーションしていくかという観点でも、また一人のすぐれたツイッターユーザーの姿という観点でも、非常に参考になる一冊。何よりファンにはあのツイート、このエピソードの裏話が読めるのも楽しみだろう。

参考リンク

[書評]中の人などいない @NHK広報のツイートはなぜユルい?(NHK_PR1号)(極東ブログ)

ツイッターについて自分なりに読んできた本のなかでは、「中の人などいない @NHK広報のツイートはなぜユルい?(NHK_PR1号)」(参照)が一番面白かったと思った。

ツイッターというものの、その生態の本質的な一面がこれだけきっちり書かれた本はなかったようにも思う。結果的ではあるが、東北震災や福一事故を挟んだツイッター史としても重要な書籍になっている。そういう面では意外に軽い本ではない。いや、読書としては軽く読めるが。
 NHK_PR1号さんがただ者ではない理由もわかる。いきなり結論めいたことをいうと、ツイッターは「バカ発見機」とも言われる面の対極に、とても優れた人を見つける仕組みでもある。NHK_PR1号さんのツイートを読みながら、「ゆるい」「いじられキャラ」としての楽しみのなかで、多くの人が実は、新しい日本社会のなかで、どう言葉を使ってどう関わるべきかを学んでいる。これはすごいことなのだ。

NHK_PRさんが ユルくなかった4日間の話(ほぼ日刊イトイ新聞)

NHK_PR1号
震災のあと、被災地以外に住んでいて
ふつうの生活を送れるはずなのに
震災そのものや、
震災まわりの「デマ」にとらわれてしまって
「3月11日」から
前へ進めてない人がいっぱい、いたんです。

それは、タイムラインを見るとわかるんです。

---
この人は、まだ3月11日にいるな、と?

NHK_PR1号
いまでは、だいぶ元に戻っていると思いますが
もし、まだ「3月11日」だとしたら‥‥
やはり、そこから先へ進んだほうがいいと思う。

---
そこに留まってしまっては‥‥駄目ですよね。


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#私にとってのNHKはラジオ英語講座。「基礎英語」「続基礎英語」「英語会話」「やさしいビジネス英語」で勉強していました。

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