MOVIE 「この空の花」
長岡まつりの大花火大会を題材にしたということで話題になっていた、大林宣彦監督の最新作「この空の花」をようやく見てきた。
噂に違わぬ「ワンダーランド」な作品だった。
※以下内容に触れているため、未見の方はご注意を。
映画を見る前に読んでしまったのがこのレビューだった。
大林宣彦監督「この空の花」が超問題作! じじいがすごいことをガツンとやった!(エキサイトレビュー)
と て つ も な い !
大林宣彦監督の新作映画「この空の花 長岡花火物語」が、とてつもない。すさまじいというか、じじいがガツンとやると、すごいことを素でやる!
理屈超える、時空超える、映画超える。
マジックリアリズムっつーより、じじいリアリズムで、デタラメさ満載の掟破り超傑作かつ超駄作かつ超問題作。映画のはじまりからすごい。
「この空の花」ってタイトルがあって、「A Movie 長岡映画」って出て、「2011年3月11日を体験した僕らはうんぬん」って出て、「遠藤玲子の感傷旅行」って出て、どんだけ出るんだよ、あわあわしてたら、「まるで夢のような、でも本当の話」ってナレーションで、「長岡ワンダーランドに一緒に旅しましょう」とか言いだして、しょっぱなから、ワンダーすぎてついていけない。
という書き出しで、以下延々とこの映画がどのくらいとてつもないかを書かれていて、これはどこに連れて行かれてもかまわない(下手すると駄作である)覚悟を決めて見ないといけない作品らしいな、と腹を括った。
それでも見なければと思ったのは、ひとえにこれが大好きな長岡花火を題材にしているからである。
さらに、昨年の夏の水害のあと驚異のスピードで花火の観覧席を復帰させたことも映像として取り込まれていると聞いたからだ。
新潟県民として何としても見届けねばならない作品だろうと思ったわけである。
残念ながら有楽町スバル座での上映を逃し、渋谷のアップリンクでこの夏上映していることを知って出かけて行った。
結論としては、まったく違和感なく見れてしまった。違和感がなさ過ぎて、自分が大丈夫なのかと不安になったくらい。
よく考えてみたら、「時をかける少女」や「転校生」「ふたり」「異人たちの夏」などを撮っている大林監督の作品なのだから、過去と現在と未来、生と死、事実と虚構が縦横無尽に行ったり来たりするくらい、まったく普通なのだ。
そもそもセリフの間合いも普通の芝居と違う。テロップががんがん入るが、そうでないと会話を聞ききれないまま進んでしまうだろう。だいたいこんなに一輪車が走り回るなんて通常のドラマではあり得ない。虚構性に満ちた枠組みの中で撮られているので、逆にその中にどっぷり入り込める。と言うか、そのくらいの虚構性の枠組みがないと、この事実を扱うのは重すぎる。
この事実というのは、戊辰戦争から第二次世界大戦での模擬原爆、長岡大空襲、そして中越地震、東日本大震災。さらに広島・長崎の原爆投下。日本各地の空襲。第五福竜丸。そしてパール・ハーバー。次々と苦難をつきつけられては乗り越えてきた長岡のまちのものがたりであり、これから苦難の中、想像力を携えて生きていかなければならない「私たち」のものがたりでもあるのだ。
場所を間違えて落とされた模擬原爆。その犠牲になった農民の家族。その子孫。
一人当たり2本の集束焼夷弾が落とされた長岡大空襲を生き延びた多くの人達の「まだ戦争には間に合う」という数々の証言。
「みんなが爆弾なんかつくらないで きれいな花火ばかりをつくっていたら きっと戦争なんか起こらなかったんだな」という言葉で名作「長岡の花火」を残した山下清(作中では8年振りにランニング姿を解禁したという元「たま」の石川浩司がそのまんまに演じていた)。
多くの登場人物と多くの出来事、多くの思いが花火に集約されて織り上がる、まるでタペストリーのような作品。
私は恥ずかしながら、模擬原爆のこと、長岡大空襲のことをほとんど知らなかったのだと思い知らされた。圧倒的に具体的な描写で、その時のこと、そしてその後残された人達の苦しみが描かれ、あの花火がこういう思いを持って上げられていたのだと突きつけられた気がした。来年また中継で見ることになるかもしれないが、その時正三尺玉の上がるときのサイレンの音がまったく違って聞こえるだろうと思う。
戦争を知らない子どもたちが圧倒的に占めるようになった今、この映画は多くの方にぜひ見てほしい。
どうしても語り継がなければならないことだから。
今年の長岡花火では、映画公開を記念した花火「この空の花」が打ち上げられたが、これがいやもうすごかった。
ネットでもこんな風に話題になったとか。
日本が誇る夏の夜空に咲く大輪の花! 新潟県の “長岡花火” があまりに美しすぎるとネットで話題に(ロケットニュース24)
『長岡花火 「この空の花」 2012年8月3日』という動画には、その長岡花火の一部始終が映し出されているのだが、これがもう! 本当に息を呑むくらい美しい!色鮮やかな花火、ユニークな形状の花火、そして大迫力の巨大な花火と、様々なタイプの花火で観客たちを魅了し、見る人の心に大感動をもたらす。この世界トップレベルの長岡花火について、動画投稿者は次のような文章を動画説明欄に記している。
長岡花火を題材にした映画、大林宣彦監督作品 「この空の花-長岡花火物語」の公開を記念した花火です。B.G.M.は作曲家の久石譲さんが主題曲を3分程度に編集したものです。総合プロデューサーは天地人花火を手がけた作曲家の池端信宏さん。新しい長岡花火の名物です。(YouTubeより引用)
映画を見てからこの花火を改めて見ると、華やかさの影にある多くの悲しみ、苦しみも感じられ、だからこそますます美しいと思うのだった。やっぱり、長岡の花火は世界一だ。
参考リンク:
「この空の花 ―長岡花火物語」(「長岡映画」製作委員会、PSC)(YOMIURI ONLINE)
「この空の花」撮影日記@撮影折り返し 熱気と緊張が現場包む 代役、雨…“事件”続々 エキストラには気配り(新潟日報 「この空の花」特集)
#この特集記事はお時間ある方はぜひ目を通していただきたく。
長岡市の模擬原爆投下地点跡地に行ってみた(icoro)
#長岡花火情報でもおなじみのicoroさん2008年の掲載記事。
関連エントリ:
1945年8月11日、新潟では「原爆疎開」があった(2005/08/11)
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#「夏子の酒」の主人公・夏子の祖母が長岡大空襲に合う巻。
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