COMIC 「3月のライオン」 第6巻 羽海野チカ
前回のラストで、主人公の零がお世話になっている一家のひとり・ひなたが、学校でいじめにあうクラスメートをかばったことで新たないじめのターゲットになり苦しんでいる様子が語られた。今回はその話が中心となる。
おそらく今でもこういうことはどこでも当たり前のように起きているのだろう。この巻への反響が特に大きいのは、「いじめ」の渦中にいたことがある人、身近にそういうことを見ていた人の多さを表していると思う。
発言力のあるグループによる「気に入らないから」という理由での陰湿な攻撃。巻き込まれたくない周囲のクラスメートは離れていき、担任は事なかれ主義で逃げ、学校は針の筵になる。何とも言えないリアルな描写にぞっとする。
そんな彼女の力に何とかなりたいと考えた零は、将棋で勝って賞金を稼ぐことを目指す。彼女の苦しみを減らすために転校や弁護士を頼むなど、何か手を打つときに必要になるのはお金だから、安心してもらうためにバックアップをしたいと考えた。そして何より「今こそ必要とされたい」と願う。
彼自身小学生の時実の家族を交通事故で亡くして以来、「無視」され続け、居場所のないまま過ごしてきた。そんな彼に初めてできた暖かい居場所がひなたの一家。そんな彼女のためにも、自分のためにも勝ちたいとこれまでになく強く思う零。そんな中新人戦を共に勝ち抜いてきたライバルの二階堂が持病を悪化させて敗退したことを耳にする。様々な人の様々な思いを胸に闘う零が、初めて「自分を大切にして」打った将棋で見事勝ち抜く様は、見ていて胸を震わせた。
ひなたを取り巻く現状は残念ながらまだ明るい見通しは持てないが、そんな中での零の成長はひとつの光のように思える。「孤立」していた零が他人に助けを求められるようになり、「自立」への強さを持ち始める。それが次巻でどんな展開を生むか。今からドキドキしながら待っている。
参考リンク:
3月のライオン : 30万部超えで最新6巻がシリーズ初の首位(まんたんウェブ)
#こちらの単行本は、印税をすべて東日本大震災の義援金にされるとのこと
白泉社 (2011-07-20)
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