COMIC 「花よりも花の如く」第9巻 成田美名子
7巻・8巻は憲人出演のテレビドラマ「石に願いを」の本編とメイキングでしたが、9巻はまた本業・能楽師としての生活のお話に戻る。ストーリーとしては「道成寺」の披キが決まって準備に向かっていくことと、仲良し(?)の狂言方・宮本芳年の妹・葉月への恋心が育っていくことの二つが交差しながら進んでいく。
能楽では重い習いの曲として有名な「道成寺」。和歌山にこの伝説の元となった道成寺というお寺があり、憲人は左右十郎(祖父)と匠人(叔父)と三人で道成寺に向かう。長い階段の前で「おー、この階段!乱拍子ですね?!」と興奮する憲人のセリフ。「あの乱拍子はこの階段を登るところを現していると言われてる」との匠人のセリフに私自身「そうだったのか!」と驚く。(無知ですみません…) 道成寺にまつわる様々な逸話を読むことができて、実にためになった。
また、「春日龍神」の下調べで奈良に行く時、ふとしたことで葉月も同行することになる。一緒に歩き、彼女にひかれている自分に気づく憲人の揺れる心が切ない。彼女が自分をどう思っているかまだわからない中、それでも自分の思いを認め、大切にしようとする憲人。お似合いの二人なので、できればハッピーエンドになってほしいと思うのだが。
別のエピソードで、「石に願いを」で共演した藤井琳が弟子入りして、新しい仕舞で「熊野(ゆや)」を習うところは、私自身久しぶりに仕舞のお稽古を復活した時にやった曲が「熊野」だったので、「そうそう、これこれ」ととても身近に読んでいた。私は「役を意識して舞う」なんて境地にはとても達してなく、型を覚えるので精一杯の状態なのだが。
「道成寺」と恋愛。ふたつの新たな「挑戦」が憲人をさらに成長させそうな予感にあふれる9巻だった。
ここからは余談。
欄外のはみだしで、いつもはアシさんとの愉快な会話やはみだし話などが手書き文字で書かれているけれど、今回は活字が使ってあった。なぜなら、震災についての話題だったから。
長年のファンの方はご存じの通り、成田さんは青森市ご出身。今もご実家にはお母様が住んでいらっしゃる。津波などの被害はなかったけれど、停電や物資不足など、やはりサポートは必要な状態。そのことも含め、成田さんが今回の震災で感じられたことを書かれている。
その中にこんな一節があった。
スムーズに全てが動いているときには見えにくかった人の気持ちが、震災以降いろんなところに見える。被災地では思いやりも悲しみも怒りももっとずっと露だろう。
反応や表現は人それぞれ違うと思うけれど、こんなに多くの人と同じ経験を共有するのも、生まれて初めてのような気がする。
そう、3.11以前は当たり前の日常の一部として見えなかったいろいろな世の中を動かしているものが、非日常となった時に次々とあらわれてきたことが、何より大きな驚きだった。世の中のしくみや、人の思いや。
3.11は始まりであるということ。これからの行動で歴史が作られていく。
成田さんの言う通り。私たちが歴史を作っていくのだ。
#「熊野」収録アルバム。仕舞のクセ「立ち出でて峯の雲」の部分ももちろんあります。
コロムビアミュージックエンタテインメント (2004-12-22)
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コメント
欄外のはみだしが活字なのは、成田美名子さんのコミックスで初めてですね。デビュー以来の活字に戦慄を覚えました。一冊のコミックスの中でも、3.11で世界が変わったことを実感しました。
47ページの有塔さんのくだりで、『NATURAL』11巻後半の外伝部分が文庫未収録なのを知りました。だから『NATURAL』11巻は入手困難なわけですね。コミックスで追い続けていてよかったです。
投稿: 荻野達也 | 2011/08/15 16:10
>荻野達也さん
お久しぶりです&コメントありがとうございます。確かにはみだしが活字というのはとても異例ですよね。それだけ3.11が成田さんにとっても重かったのかな、と感じました。
「有塔さんのくだり」は、「えっあのあとつきあってたの!」と正直衝撃ではありました(笑)。外伝部分が文庫未収録だったとは初耳でした。あそこが読めないなんて、もったいない…。
投稿: くりおね | 2011/08/15 22:12