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2011/06/20

MOVIE 「奇跡」

奇跡先月末福岡に出張に行った時、ホテルのロビーや部屋にチラシがおいてあり、ポスターもあちこちで見かけた映画「奇跡」。
九州新幹線をモチーフにしてるからなのかな、と単純に思っていたけれど、あまり興味がわかなかったのだが、がぜん興味を持ったのは監督が「幻の光」「誰も知らない」の是枝裕和さんだと知ってから。

というわけで「奇跡」を見てきた。

※以下内容に触れていますので、未見の方はご注意ください。

大阪で親子4人で暮らしていたけれど、両親の離婚で2人ずつに別れて暮らすことになった小学生の兄弟、主には兄が主人公。兄は母親と、実家の鹿児島で母の両親(彼にとっては祖父母)と暮らし、弟は父親と福岡で暮らす。兄は毎日吐き出される桜島の灰に「意味わからへん」と苛立ち、何とかしてまた4人で暮らせないかと夢想する。弟は元気で楽しく暮らす「努力」をしながら、一見軽やかに、女友達たちと過ごし、父親のライブでグッズを売り、家庭菜園でトマトや空豆を植えている。

そんなある日、兄はこんな噂話を耳にした。
「九州新幹線が全線開通する日、一番電車の鹿児島発さくらと博多発つばめがすれ違う瞬間にすごいエネルギーが生まれて、奇跡がおきる。願い事がかなう」
奇跡を起こして、もう一度家族4人で暮らせないか。そう思った兄は、友人たちや大人を巻き込んで、ある冒険に向かっていく。

是枝監督の作品は、ドキュメンタリー出身らしい奇や衒いのない誠実な映像に、人間の生への肯定、営みへのあたたかい視線が感じられて、じっくり味わいたくなることが多く好きなのだが、今回の「奇跡」はまさにそんな是枝監督らしさにあふれた素敵な作品だった。

英語タイトルは「The Miracle」ではなく「I wish」なのだそうだ。奇跡そのものではなく、願う人の「思い」に話の主眼が置かれていることがよくわかる。

ディテールがとても丁寧で、どの登場人物も善悪二元ではなく、だいたいいい人なんだけど、ちょっとだけ困ったところもある人たちとして描かれているところが、地に足がついていていい。人のつながりの喜び、儚さ、期待と諦め、そんな繊細な感情をちょっとした会話や映像で伝えてくれる。じっくり味わいたい映像だ。

そして何より、主人公兄弟を演じたまえだまえだの二人。是枝監督が台本を渡さず、撮影日に毎朝口伝えでシーンを説明して演じさせていたというだけあって、わざとらしい演技などみじんもなく、本当にこんな兄弟がいるように感じさせる。子どもならではの生命力にあふれたパワーを画面いっぱいに振りまき、明日への希望を感じさせるエンディングに自然に向かわせている。

できれば劇場で見てほしいと思うのでこれ以上詳しいことは書かないが、ひとつだけ一番印象的だったシーンについて。

冒険の途中で子どもたちはある家で一泊するのだが、その夜弟は父親のインディーズデビューCDを兄に見せ、兄は祖父が久しぶりに作ったかるかんを弟に食べさせる。お互いの会えなかった時間をそうやって埋め続け、「兄ちゃん背が伸びた?」と二人で背中を合わせて背比べをする。そのあと弟が「そろそろ寝ようか」と言い、兄も「せやな」と言うけど、でもしばらく二人で無言で背中に寄りかかりあい続けるシーン。この時間を二人が名残惜しんでいることが黙っていても伝わってくる、愛おしく切ないシーンだった。

エンディングに流れるくるりのテーマ曲「奇跡」がまたしみじみといい曲で、しかもフィドルでハンバートハンバートの佐藤さんが参加しているというおまけ付き。

大事件が起きるわけでなく、スリルやサスペンスとも無縁の、ある意味地味な作品だけど、人生について丁寧に語られた、大事に胸の奥にしまいたい佳作。

関連エントリ:
MOVIE 「誰も知らない Nobody Knows」(2004/09/11)

参考リンク:
社会を外から批評する子ども 映画「奇跡」是枝裕和監督(asahi.com)

「社会の中だけで映画をつくることは可能だろうけど、この映画は子どもたちがそこから半歩踏み出して、ある種の理不尽さを経験して、自分の人生が自分の思いい通りにならないことを悟る話。子どもは“全能感”を失って成長するわけだから、外にへ踏み出さないとダメなんでしょうね」

岸田繁(くるり)×佐藤良成(ハンバートハンバート)対談(CINRA.NET)

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コメント

くりおねさん

私も、公開されて直ぐに観に行きました。
是枝作品のファンなので(^^)

くりおねさんのリポート、あぁそうだった、そうそう! と思い出しながら読みました。
子どもたちの、自然体での会話がよかったですね。
人間のみならず、小さなモノ(小物)ひとつひとつの扱いや、風景の描写が大変丁寧で、是枝さんの優しい眼差しが感じられます。
彼の作風は、私が好きなホウ・シャオシェン監督(台湾)の作品に似た所があるのですが、しみじみといいなぁと思います。


あまり深く考えずに観ていると、「心がじんわりと温まる、ほっとする映画だね」という程度で終わってしまいがちなのですが、是枝さんは表立って大袈裟には主張しないけれど、子どもを介して伝えたい事をさりげなく伝えているようで…後でよく考えると、実は、とても深いと思います。

仰る通り、兄弟二人が背比べをしたシーンは印象的でした。そして、「家族よりも世界を選んでしもうたんや…」というあの台詞にも、グッとくるものが。

それにしても、鹿児島の火山灰にはビックリしました(涙)。
かるかんといえば…向田邦子さん(^-^

投稿: 凛花 | 2011/07/08 00:58

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