スイッチオンプロジェクト「記者体験プログラム」に取材を受ける村人役として参加した
「ガ島通信」を書いている藤代さんを始めとする有志が主催する、学生さん向けのスイッチオンプロジェクトというプログラムのお手伝いをしてきました。
スイッチオンPJ「記者体験プログラム」募集要項(追加募集締め切りました)
この夏、記者になる―。 今年の夏に実施する、「記者体験プログラム」の参加者募集を開始します!2泊3日の合宿形式で、1日目はスイッチオンPJのジャーナリストによる伝わるスキルや文章力を磨くワークショップ。2日目は学んだスキルを実践し、現役ジャーナリストや他の参加学生と班を組み、オリンピックセンターの架空の村に配置された村人(演者)に取材。何が起きているかを明らかにし、班ごとに発表します。皆でジャーナリストのスキルを磨きながら、本音で夜通し話しあう…ジャーナリストの方々も、夏にこのプログラムで皆さんと一緒に学べることをとても楽しみにしています!スイッチオンは、現役のジャーナリストと学生が、本気でぶつかりあいながら学びあえる場所です。ぜひこの夏参加して、仲間になりましょう!
私はこの中の取材される「村人」として参加しました。
代々木オリンピックセンターに参加学生、記者や研究者、広告関係者からなる指導者、運営スタッフ、合わせて100人が集まり、初日はスキルアップのワークショップと2日目の模擬取材の説明・準備、そして2日目午前が模擬取材でした。
記者体験プログラム2010『インタビューには頭を5分割して挑むこと』
記者体験プログラム2010『インタビューでノートが取れない』
模擬取材の場でどんなことが起きたかは主催者の藤代さんのブログ記事に詳しく紹介されています。
記者体験プログラム2010『模擬取材で起きたメディアスクラム、決め付け…』
私は村人の一人で、土産物店の店主という役でした。架空の折船(おりせん)村という村で、20年以上前にスキー場人気で繁盛したものの、それが衰退すると共に観光客も激減し、店もさびれているという設定です。
そんな折、村の青年部長が村に伝わる落武者伝説をもとに、村祭りを再開する企画を立て、それが新聞記事となりました。この記事を元に学生記者さんたちは今村に起きていることについて取材しに来る、という設定になっています。
演者は私を含めて10人。村の振興課長、最年少村議、青年部長、婦人部長、スナックのママ、コンサルタント、大学教授、助手、Uターン女性といった役割で、それぞれ立場と思惑、思いがあります。私たちは基本の設定はありますが、実際の取材の場ではその時々で自由にふるまってかまわないことになっており、例えば取材態度があまりに失礼だったりしたら拒否したり、デマを流したり、自分を守るための嘘をついたりといった行動もOKと言われていました。その場で自然にふるまってかまわないと言うことです。
記者に最初に与えられていた情報は、予め配布されていた架空の新聞記事と村役場の場所だけ。そこから3時間という制限時間の中で何かをつかむために学生記者さんたちが新たに得られた情報を元に次々と取材を進めていくわけです。
村人のいる場所は物理的に役場から離れており、そう簡単に取材には来ないだろうと思っていましたが、そんなに時間が経たないうちに一人二人と記者さんがやってきました。あとは途切れることなく、時には10人近く一度にやってきたりして、終了までずっと対応を続けることに。振興課長に提案して試作品を作った「落ち武者せんべい」などを紹介したり、村の観光の歴史概略などについて問われるままに話しました。
店主としては、夢よもう一度ではありませんが、せめて今より多くの人に村を訪れてほしいと思っていて、そのためなら村祭りでもダムでもできてほしい訳です。ダムを作って観光館を作り、そこに新店舗を構えると言う口約束を村議会議長としていたりもします。ただ、そこまでは掘り下げて質問されることはありませんでした。ダムについては賛成か反対かという色分けのための質問がほとんどで、一部ダムを作ることをどう思うかと質問されたグループもありましたが、何を聞きたいのかがよくわからず、表面的な話に終始せざるを得ませんでした。また、反対派には都会から来た人達から知恵をつけられたり煽られたりしている気配があることも伝えたりしたのですが、どこまで記事に反映されたのかはわかりません。おそらく採用されていないのではと思います。
店主の立場としては取材を断るつもりにはなれず、時にはお茶を出してあげたりして、終始「気のいい村の土産物屋さん」として行動しました。少々決めつけ気味に「あなたの理想はこういうことなんですね」と人の言ってることを勝手にまとめる人もいたりしましたが、大勢いらした時も順番に質問され、不快な思いはほとんどすることはありませんでした。
他の演者の方の感想として、こんな記事もあります。
まさか大学教授がデマを流していたなんて想像もせず、このせいで終了30分前に駆け込みで何人も取材がきたのでした。しかもダムへの反対賛成の色分けだけが目的だったり、アンケートでダム反対が96%を占めるとあるけど本当か、と聞かれたり。学生記者さんたちの多くは新たに出てきた怪情報に振り回されていました。
演技とは言え取材を受け続けてみると、学生さんたちが「記者」という記号をまとった瞬間に、世間でイメージされる「記者」としてふるまっていることに驚きました。ステレオタイプとはおそろしいものです。昔受けた取材で自分の作ったストーリーにあてはまるまで延々と質問を繰り返されたことがあり、その時と全く同じでした。
つまり、このプログラムでは、取材を疑似体験することで取材の場で実際に起きる様々なこと、とりわけ取材する側の決めつけ・暴走のおそろしさ、それがいかに取材される側を傷つけるか、本質を見失うのか、そういったことを体感してもらうことが大きな目的のひとつだったのです。たった3時間でしたが、それは見事に再現されていましたと思います。
どうすればメタな視点を持ち続けられるか、本質をどう見極めるか、誰に何を伝えるのか、ジャーナリストを目指したりジャーナリズムを研究したりする学生の方々にはそれを大きな宿題としてとらえ、できれば今後もそういった問題意識を持ち続けてもらえるとうれしいなあと思います。
学生記者の皆さんの奮闘はもちろん、指導者役のデスク、運営スタッフの皆さまの真摯な取組あってのスイッチオンだったと感じます。皆さまお疲れさまでした。
★学生参加者の感想
スイッチがオンされた(mediumoon)
取材中も思考は簡単に停止した。
PDの藤代さんも指摘されていたが、取材中、多少なりとも僕らは「記者」になってしまっていた。
いろんなことを一歩引いて見てしまう僕は、「決してメディアスクラムのようなことはないように」と思っていたし、実際多くの人が一斉にひとりに取材する光景をなんだかなと思っていた。
しかしそこでただ見ているだけにもいかないのは事実。いつのまにか競うように自分の質問をぶつけていた。
スイッチオンプロジェクト 記者体験合宿♪2 2010年08月09日00:35(好音)
1面トップを狙え、という掛け声のもと、
多くのグループが、ダム問題追究のため、走りました
★デスクの感想(8/30追加)
「記者体験プログラム」遅めの振り返り~「分かっている」と「できる」の差異(ニュース・ワーカー2)
今回の模擬取材では圧迫的な取材、決め付け取材もあったと、アクターの方からお話がありました。この点については、なぜそういう事態が起きたのか、デスク役の皆さんの間でもメーリングリストでその後もいろいろな意見がありました。現場に立ち会っていたわけではないので基本的に推測に過ぎないのですが、わたしは、人間としての「素」の表れではないかと考えています。22ものチームが入り乱れての、もしかしたら「勝った負けた」のゲーム感覚もあったかもしれない中での模擬取材でした。知らず知らずのうちに、頭が熱くなり、前のめりになったのかもしれません。
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