BOOK「働き方革命」 駒崎弘樹
病児保育というのは耳慣れない言葉かもしれないが、自治体では「保育園や幼稚園等に通園しているお子さんが病気のため集団保育が困難で、保護者がどうしても仕事を休めず、家庭で保育ができない場合にお子さんを医療機関で一時的にお預かりします」という内容で、育児サービスの一貫として行われているもの。また病児後保育とは、「保育園や幼稚園等に通園しているお子さんが病気の回復期のため集団保育が困難で、保護者が勤務の都合上、家庭で保育ができない場合にお子さんを保育園で一時的にお預かりします」というものだ。
職場でお子さんを保育園に預けている同僚がいらっしゃる方は、保育園から電話がかかってきて「熱を出したから迎えに来てほしい」と言われる様子を何度か目にしていらっしゃるのではないかと思う。病気の子どもは通常の保育園には預けられないからなのだ。
ただ、病児保育を行う施設の数は圧倒的に足りず、それをNPO法人の形でのサービス提供を実現したのが駒崎さん。そのあたりのいきさつなどはこちらの講演記録に詳しい。
フローレンス代表理事・駒崎弘樹氏~社会起業家という生き方~(GLOBIS.JP)
今となってはワークライフバランスを意識した、自身の大きなビジョンに向けて日々お仕事をしている(と想定される)彼も、フローレンス立ち上げの当初は寝る間も惜しむ仕事漬けの日々だったとのこと。そんなある日、たまたま半ば強引に連れて行かれた同窓会でのクラスメートの鬱の知らせ、そして自分のスタッフが「家の仕事をさせたがる夫」に負けて退職せざるを得なくなる、といった出来事から「自分のこの働き方は周りを不幸にしているのではないか?」と思うようになり、偶然得たアメリカでのセミナー受講の機会を活かして「自分のライフビジョン」の明確化とそれを実現する働き方に自分自身を改革していく、ということが、フランクな語り口で書かれている。
語り口はフランクだが、実際の行動はかなりドラスティック。でも具体的なので、自分も試してみようかな、という気持ちにもさせられる。特に自分の仕事のダイエットをするところは圧巻。スリムタイマーというソフトを使って自分の仕事にかけている時間を分解して測定し、無駄はないか確認して絞り込んでいく。定時退社が目標なので、限られた時間の中で優先順位をつけて仕事を済ませていく時に、これは大きく役立ったという。
また単純に作業効率を上げることが目的ではなく、大きな目標「こんな風に人生を送りたい」を実現するための1ステップというのが大きい。目的と手段がいつの間にか入れ代わってしまうというのはともすると起きがちなことだが、それもひとつひとつ実現できたときの感情まで含めて言語化してビジョンとして描いたからこそ、実際に実現できたのだろう。
彼自身はこれを自分だけの変化でなく、日本人全体の働き方を「自分の目指す方向に向かうことができる、自分らしい働き方」に変えていくことがこれからの世の中で必要になると感じており、だから「働き方革命」という題名をつけている。これはソーシャルな、社会全体に向けた活動なのだ。
ワークライフバランスと言ってしまうとどこか表層的だが、大切なのは一人一人が限られた時間の中でいかにいきいきと働いて生きていくか、ということ。そのために自分が試してみた手法を公開してくれているのだと理解している。
まずは、スリムタイマーを使って自分の作業を可視化してみるところから始めてみようか。
筑摩書房
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