MOVIE 「スラムドッグ$ミリオネア」
今年のアカデミー賞で8部門を独占した「スラムドッグ$ミリオネア」。
「トレインスポッティング」を撮ったダニー・ボイル監督が手がけた作品と言うことで興味を持ち、観てきました。
※以下内容に触れているため、未見の方はご注意ください
公式サイトで紹介しているストーリーは、
少年ジャマールは、警察に逮捕された。理由は、世界最大のクイズショー「クイズ$ミリオネア」に出演し、あと1問正解を出せば番組史上最高額2000万ルピーを獲得できるところまで勝ち抜いたからだ。いまだかつて医者も弁護士も、ここまで勝ち残ったことはない。しかも、ジャマールは学校にも行ったことがないスラム育ちの孤児。一体、彼はどうやってすべての答えを知り得たのか?
という導入で始まっている。これからご覧になる方はここまでで留めておくのが賢明だろう。
「フル・モンティ」ですばらしい脚本を書いたサイモン・ビューホイの緻密な構成と、ダニー・ボイルの切り取るカットの見事さを堪能するには、余計なことは知らずに観た方がきっと何十倍も楽しめるはずだから。
一言で言えば、やみくもなパワーとユーモアに満ちた作品。ダニー・ボイルはインドと言うまるっきりの異文化の土地で、きっとすごく刺激されながら撮ってたんだろうということが、映像のはしばしから感じられる。
富と貧困、都市とスラム。本音と建前、光と闇。愛と暴力。
それでも人生を信じること、運命を信じること、そんな楽天的な力があふれたドリームストーリーと言える。
リメイクを繰り返し、ビジネスモデルが疲弊しているのではないかと懸念される今のハリウッドシステムでは作れない作品であろう。
私はボリウッド映画は「ムトゥ 踊るマハラジャ」しか観たことはないが、あれを初めて観た時の衝撃ったらなかった。ひたすら群舞で歌い踊り、パワーで勧善懲悪ご都合主義ストーリーもなんとなく納得させてしまうすさまじさ。そのムトゥ的パワーは別の形であちこちではじける。逃げるスラムの子どもたち。どこまでも続く人の波。生きるために知恵を絞ってさまざまな手段を取る主人公たち。そのリアルな表現にどこまでも屈しないパワーが通低音として鳴り続けているのだ。
ラスト近く主人公が迎える大きな判断。
ぎりぎりの生活をしてきた中で、信用できる人間とそうでない人間をかぎ分ける力が主人公であるジャマールには身についていた、そういうことなのだろうと思う。
「生きろ、どこまでも、生きろ」
いろんな見方があると思うが、私にとってはそんなメッセージを感じた作品だった。
「これでオスカー?」と疑問を呈する方々も多いが、この金融危機で気持ちがシュリンクした2009年のオスカーとしてはやはりこの作品なんだろうと思う。今こそ求められる映画だと。
あと、蛇足ながら付け加えるとしたら、物語が終わっても席はお立ちにならないように。お楽しみを見逃してしまうから。
やっぱりこれがないとね。
#アカデミー作曲賞、主題歌賞を取った音楽もすばらしい。映像との相乗効果は見事。
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