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2009/05/20

BOOK 「赤めだか」 立川談春

赤めだか昨年出版されて大いに話題になっていた立川談春さんの「赤めだか」。
なんとなく興味あるなあ、程度に思っていたのが、「何としても読まねば」と思うようになったのは、「情熱大陸」で談春さんの回を見てからだった。

話は子どもの頃の夢とそれが破れたことから始まり、サラリーマンには到底なれない、さあどうしようと思いあぐねていた時に見た談志の「芝浜」に受けた衝撃で、弟子入りを決心する17の時に続く。前座時代の長く苦しい修行、二ツ目昇進、真打昇進と進んでいく、いわば成長物語としての軸がひとつ。基本的にはこちらを追いかけていくのだが、読みながら強く感じたのは、この本は師匠である談志への壮大なラブレターだなあ、ということ。

談志の落語が好きで、好きで、好きでたまらなくて、そんな談志に認められたくて、褒められたくて、誰より可愛がってほしくて、一本道をひたすら進んできた、そんな風に私には読めてしょうがなかった。

そんな談春の思いと、そして彼をとりまく弟子仲間たち。おそらく談春と同様に談志の落語に惚れて、同じ道を志したはいいけれど、誰もがついていけるわけではない、いやむしろキツサでは定評のある立川流の修行では脱落者が大きな割合を占める、その脱落者たちの思い。修行時代お世話になった築地のお店を始めとした様々な人達の彼への思い。目に見えないいろんな思いに背中を押され支えられ、厳しい芸の道をひたすら進んでいく姿は胸を打たれる。

さて、「情熱大陸」でも談春に対して絶賛のコメントを寄せていたさだまさしが登場する箇所があって驚いた。どうやらさだまさしは重要なターニングポイントに関わっていたらしい。少々長いが引用する。

その日談春(オレ)は、さだまさしの前で酔い、グチった。さだまさしに談春(オレ)は惚れ、さだまさしは落語を愛し、談志を尊敬していたので、弟子の談春(オレ)を可愛がってくれた。
初めてさだまさしに甘ったれたら、見事なまでに跳ねつけられた。
「談春(おまえ)、一体自分を何様だと思ってんだ。立川談志は天才だ。俺たちの世界でたとえるなら、作詞作曲、編曲に歌まで独りでできてしまう。その全て、どれをとっても超一流。そんな凄い芸人が落語というひとつの芸能の中で、五十年の間に二人も三人も出現するわけがないだろう。憧れるのは勝手だがつらいだけだよ。談春は談志にはなれないんだ。でも談春にしかできないことはきっとあるんだ。それを実現するために談志の一部を切り取って、近づき追い詰めることは、恥ずかしいことでも、逃げでもない。談春にしかできないことを、本気で命がけで探してみろ」
「でも談春(オレ)、もう少しなんとかなりたい。オールマイティに近づきたい」
「あのな、誰でも自分のフィールドに自信なんて持てない。でもそれは甘えなんだ。短所は簡単に直せない。短所には目をつぶっていいんだよ。長所を伸ばすことだけ考えろ。談春の長所がマラソンなら、マラソンで金メダルとるための練習をすればいいんだ。マラソンと100メートル、両方金メダルはとれないんだよ。マラソンと100メートルではどっちに価値があるかなんてお前の考えることじゃない。おまえが死んだあとで誰かが決めてくれるさ。お前、スターとラインに立つ覚悟もないのか」
「あります」
「それなら早く真打になれ。そこがスタートラインだろう」

談春の力を認めてのさださんらしい叱咤激励。20代で億単位の借金をし、57歳の今に至るまで第一線のアーティストとして走り続けるあのさだまさしにここまで言わせるというのは、やはりすごいことなのだ。

伝統芸能の世界の持つ不条理さ、芸の世界に生きる人間の持つ狂気、知らないうちに継承される師匠と弟子のつながり、思いの深さといじらしさ、奥ゆかしさ。今や死語になりかかっている「粋」を体を張って生きようとする人達の物語でもあるのだと、読んだあとしみじみ思うのであった。

関連エントリ:
TV 「情熱大陸・立川談春 落語家」(2009/01/11)

#談春の「父さんとポチ」収録

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