BOOK 「会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ」 斎藤正明
紀伊国屋BookWebでの紹介と目次は下記の通りです。
一度、出港したら長期間陸地には戻れず、逃げ出すこともできないマグロ船。
病院もなく、遊興施設もなく、コンビニもない、陸上とは180度異なる船上の世界。
そんなところで突然働くことになった会社員の私。
きっかけは、ある日、上司から言い渡されたひと言だった。
「お前はマグロ船に乗ってこい!」その命令を断ることができず、泣く泣く乗るハメになった私が、船上で目にし、耳にしたものとは一体…。第1章 海の男はストレス知らず
第2章 海と向き合えば自分がわかる
第3章 海の男は仕事を楽しく変える
第4章 マグロを釣るために必要な考え方、ものの見方
第5章 基本に忠実であれ!時に大胆かつ賢くふるまえ!
第6章 マグロ船で学んだ人を活かすコミュニケーション術陸上とは180度異なる船上での生活は、極度にストレスの溜まりやすい空間だが、そんな場所だからこそ、漁師たちのコミュニケーション術やストレス対処法があった。大自然に立ち向かい、常に命を懸けで仕事に取り組む漁師たちの口からは、時に重みのある人生哲学も語られる。
そう、この本の主役は漁師さんの言葉たち。
会社で毎日ヤダヤダと思いながら働いていた筆者にはどれもこれも目ウロコな言葉ばかり。
私が読んでいて「おお、これは」と思った言葉をいくつか抜き出してみます。
「『結果』ばかりに気を取られると、その途中で見られるはずだった、いろいろなおもしれーもんを見逃すんど」「努力することに、見返りを求めん方がいいと思うんど」
「何かの分野で成功した人は、もともと能力があるからうまくいったわけではなく、うまくいったってことは、きっとあの人には能力があったんだろうと、後で理由づけをされちょるだけぞ」
「自分の悪(わり)ぃとこばっか見るやつぁ、他人に対しても悪(わり)ぃとこばっか見るんど」
「最初に話しかける言葉はあいさつじゃ。あいさつで出鼻をくじかれると、次に何も話せめーが」
「他人の仕事を見て、できないことを指摘するのは誰でもできんど」
「アドバイスは、こっちの立場に立って考えてくれないところに意味があるんど。じゃからたいていのアドバイスは的はずれになるが、そのおかけで、たまに自分が気づいていなかった大事なことを教えてくれる時がある。自分の発想なんかたかが知れとる」
「ええアドバイスなんか考える必要はねぇ。大事なのは、どのアドバイスが一番伝わるかを見極めることじゃ」
などなど。
これが標準語でなく方言(大分の船だそうです)で語られるのが、味わいと親しみを感じます。
いろんなことを考えて考えて、いいかげん考え疲れてきたホワイトカラーには、こういう言葉が沁みるのかもしれません。あっと言う間に読めてしまいますが、じんわり暖かさが残る一冊です。
ところで、元横山やすしのマネージャーだったことで有名な大谷由里子さんが主宰している「志縁塾」という団体でも講師をやっていらっしゃるようで、そこでの講師プロフィールを見てみたら、こんな記述がありました。
【 略歴 】
1976年
・ 東京都昭島市に生まれる。
2000年
・ 北里大学 水産学部 卒業。
・ バイオ系企業の研究所に配属。
2001年
・ その研究所では、所長の無理な命令により、入院や休むスタッフが2割近くいた。
・ 所長の理不尽な業務命令により、マグロ船に乗せられる。
・ 帰港後も深夜にわたる残業などが続く。
2004年
・ 心身の不調とウツ状態におちいり、1ヶ月休職。
・ 復職後、所長は配置転換になる。
・ 残された社員間で、「個々人の能力が発揮できるような対等な話し合いの場を創ろう」という事になり、ファシリテーションの技術を学び、業績向上に貢献。
2005年
・ ネクストスタンダードを立ち上げ、会議コンサルタントとして活動。
2008年
・ 「笑い」を取り入れた「人材育成」を行う研修会社「志縁塾」の会議コンサルタントとして、 活動の領域を広げている。
マグロ船は所長の理不尽な業務命令だった。他にもそういう理不尽がまかり通っていた、そんな会社で斎藤さんは日々過ごされていたのですね。会社での人間関係や仕事の描写がことごとく暗かったのが、これで納得です。
会議のファシリテーションを学んでいくことになったきっかけなどは、この本にも一部書いてあったのですが、そこから独立という大きな転機を迎えるまでは休職など様々な苦難があり、そこを乗り越えて今の活躍があるということも、いろんなことを示唆してくれている気がします。
参考リンク:
【書評】 会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ(idea*idea:2009/03/30)
#「これはかなり良い本です。いまのところ今年のベスト本(まだ3月末だけど)。テンションあがりまくりです。おすすめしておきます。」と田口さんも強力プッシュ。
著者インタビューもありました。
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#「漁師」というキーワードで、つい。
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