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2008/11/07

COMIC 「花よりも花の如く」第六巻 成田美名子

ずっと楽しみにしていた能楽マンガ「花よりも花の如く」第6巻。ようやく発売になった。
発売日のお昼休みに、職場近くの書店の新刊コーナーに平積みになっていたのを即購入。

※内容にかなり触れていますので、未読の方はご注意を。

収録されているのは「仄暗き夢の底より」(曲:「望月」狂言の「月見座頭」も重要なモチーフとなる)「石に願いを」(曲:「殺生石」「藤戸」)の2話。「石に願いを」は途中で終わっていて、続きは7巻に。
新キャラクター・お狂言方の宮本芳年(ほうねん)さんが引き続き活躍。さらに芳年さんの妹・女優でジャズピアニストの葉月嬢も登場。美女でナイスバディの彼女に、これはもしかして、憲人に恋の予感?

養子問題を端に発した西門との微妙なすれ違いの行方を描いた「仄暗き夢の底より」。
憲人と西門のどちらを青森に養子に出すのか、母方の祖父であり能の師匠である左右十郎先生が迷っていたと聞いて大きく動揺する憲人。そんな憲人を見て表情を曇らせる西門。その微妙な行き違いは、西門が家を出て独り暮らしをしたいと言い出すことに発展していく。
初めて取り組む「望月」の解釈でも悩み、家族とのことも悩む、そんな憲人の迷いを見た芳年さんは「月見座頭」という狂言を見ることを奨める。それは盲目の座頭を声色を変えて騙す男と、前後の男は別人と信じる座頭を描く話だった。

養子問題は憲人と西門の間にずっと微妙な影を落としてきた出来事で、これまでも何かあると憲人は「もし青森に行ったのが私だったら」とか「私がいなくなったらそこには西門がいるのだろうか」と思うことがあった。そこに踏み込んだのが今回で、さまざまに迷いながら、ある出来事を通してようやく憲人なりの結論を出すことができる。

なぜそんなにひっかかっていたのか。それは「自分は本当に必要とされる存在なのか」という不安から来るものだったから。いくつもの記憶をひもとき、糸をたぐりよせるように憲人がそれを再確認する。養子に行かなかった後ろめたさと、いつか捨てられてしまうのではないかという恐れ。気を遣いすぎるくらいにあれこれ気にかけてくれる西門の様子はその「申し訳なさ」に拍車をかけ、かえって冷たい態度を取ってしまう憲人。
どんどん凍り付いていく二人の関係に苦しみ正体なく酔った西門が発した一言が、そんな憲人の気持ちを大きくゆさぶり、反転させる。まるでオセロの駒が一気にひっくり返るように、ようやく素直に彼を想う気持ちに向かうことができた。

「(ここに)「いたい」と言って断られるのがこわい」西門の気持ち。それは「捨てられた」子どもの思い。痛いほどよくわかる。そんな西門のデリケートな気持ちを大切にしながら「いてほしい」とまっすぐ伝えた憲人は、一面だけではとらえられない人間の複雑さを、自分自身も含めて受け入れていこうとひと皮むけたような、そんな印象を受けた。

しかし「ど・・・」から「ドンペリ」になぜなるのか、憲人の思考回路はいつものことながらナゾ。ピンドン(ピンクのドンペリ、つまりドンペリニョンのロゼ↓)はさらに高いぞー。


モエ・エ・シャンドン社ドン・ペリニヨン ロゼ 1996(ドンペリピンク)

閑話休題。

もうひとつの「石に願いを」は、憲人にテレビドラマ出演オファーが来る話。能舞台とはまったく違う世界を体験することで憲人の世界が広がることになるのだが、今回収録されている部分はオファーを受けるかどうか迷い、決めるまでが中心。そこに共演者として芳年さんの妹である葉月がからんでくる。

葉月は女優とジャズピアニストを兼業しているという設定で、そのあたりは成田先生の弟さんの教(さとし)さんに取材をされた模様。巻末には弟さんも演奏されているらしいジャズ・バーのご紹介も。ジャズもけっこう好きな私には個人的にうれしい展開。

「メロディ」では現在この「石に願いを」を劇中劇として掲載中。サスペンスドラマであり、憲人も能楽師・藤哉として憲人だったら言わないような台詞を言ったりしているのが新鮮。続きが楽しみである。

おまけ:
「仄暗き夢の底より」で憲人・芳年さん・陽一さんが地方公演に行くシーンがあったが、あの橋の光景はまごうことなく新潟の万代橋。りゅーとぴあ能楽堂での公演という設定だったのだろう。お弁当(?)の折り詰めはおそらく新潟の老舗寿司店の「港すし」さんのもの。新潟出身者としてはうれしいところ。

#私にとってジャズでピアノと言えばBill Evansの「Waltz for Debby」。

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コメント

今日やっと第六巻読みました。
西門さんが酔って「おにーいちゃん」と言ったところ、そしてその時の憲人に、胸キュンでした。

葉月さんと憲人は今後どうなるのかな?
楽しみですhappy01

投稿: Hiro | 2008/12/23 18:13

>Hiroさん
「花よりも花の如く」読まれていたんですね。あの西門さんのシーンは読むたびにうるうるしてしまいます。
葉月さんと憲人さん、果たして進展するのでしょうか。ドキドキです。

投稿: くりおね | 2008/12/23 22:13

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