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2008/08/11

PLAY 「女教師は二度抱かれた」 シアターコクーン

Jokyousi松尾スズキさんの作・演出「女教師は二度抱かれた」をシアターコクーンに観に行った。

※以下内容に触れているため、これから鑑賞される方はご注意を。

市川染五郎、大竹しのぶ、阿部サダヲ、市川実和子、荒川良々、池津祥子、浅野和之というキャストを見ると破天荒な舞台を期待してしまう。
特に、以前中村勘九郎(現・勘三郎)を起用した「ニンゲン御破産」が、松尾スズキにいいようにやられた風の勘九郎丈がクライマックスで一転して歌舞伎役者としての凄味を見せてくれたので、今回染五郎さんは一体どんな料理をされて、どんな化け方をするのかと楽しみに観ていた。

結論から言うと、確かに化けた。ただし、産経新聞の染五郎本人のインタビュー記事「舞台「女教師は二度抱かれた」主演 市川染五郎さんインタビュー」より言葉を借りると、こんな感じで。

「本当に何もしない、周りを不幸にする、どうしようもない男です」

「凄く怖い話し。天久は都合のいいことしか記憶に残ってなくて、どんどん(女教師との過去という)痛みを忘れて、逃げ続ける。忘れるから次に行けるし、またそこが人間らしい」

「自分に責任があるとは思っているんだろうけれど、極めて(反応は)凡人ですよね。自分のネームバリューと、実際の人間の部分がアンバランス過ぎたから、こういうことが起きたんじゃないか。とてもヘビーな役です」


普通の、現代劇の役者として最初から最後まで立ち続けていたのだった。七五調の決めゼリフも見栄を切ることもまったくなく、そのあまりの自然さに一瞬彼の本業を忘れてしまいそうになるくらいに。

大竹しのぶや阿部サダヲなどの他のキャストは、ある意味期待通りの「怪演」を見せてくれていた。エロと不条理と小ネタがスピーディーに入り交じる劇世界を見事なアンサンブルで展開していき、特に浅野和之の「鉱物」役の存在感は圧巻。

もともと「欲望という名の電車」をモチーフにしただけあって、後半大竹しのぶがシャーリー・マクレーン風ワンピースドレスを着て登場してからの狂気はまさに「欲望という名の電車」のヒロイン・ブランチを彷彿とさせた。以前シアターコクーンで彼女のブランチを観ていたので、どこか既視感もあり。

本職の歌舞伎役者の前で阿部サダヲが歌舞伎役者のパロディを演ずる部分に、笑いながらもどこか居心地の悪さが最後まで消えず落ち着かなかったのも、すっきり「面白かった!」と言い切れない理由のひとつかもしれない。また、市川美和子演ずるマネージャーの受けるDVが、フィクションとは言え受け入れられないというのもある。

エネルギーとアイデアと役者の達者さが満載で十分楽しめるはずなのだが、何か物足りない印象が最後まで消せなかったのが残念。「蛇よ!」の時のようなハチャメチャな飛び道具の大竹しのぶを期待しすぎてしまったか。

ただし、これはあくまで私個人の感想である。
松尾さん本人のブログエントリ「グダグダ」にこう書いてあるように、一般的には好評なのだろう。

元嫁もほめてくれたが、女教師の評判がなかなかにいい。
評判のいい芝居をやっているときは、舞台裏の俳優たちの顔がおだやかでいい。
俺もピリピリすることがあるし、舞台袖から演出ノート片手に舞台を見ながら、頭を抱えることもままある。
今回は俳優やスタッフの力量もあり、安心して観ていられる。

好みの違いだと思うので、この作品を楽しんでいただくのももちろん大いにアリだと思っている。

8/17追記:参考リンク:

大竹しのぶ「女教師は二度抱かれた」(YOMIURI ONLINE:2008/07/30)

染五郎との共演は初めてだ。「染ちゃんは心が純粋なので、共演して(本当の役のように)かわいく見える。阿部さんらに歌舞伎の裏話を親切に教え、表に出すと怒られるような話をもらしてくれたり」と笑う。

 松尾の台本に大竹は吸引力を感じるという。「芸能界ネタなどのギャグが面白く、読むだけで噴き出す」。加えて、人間の業を描く狙いから、性的なせりふ、演技もあるが、大竹は平然と「全然平気。それが面白いんだから。汚い服装の場面だって、もっとあってもいい。その積み重ねで、山岸という女の悲しみが浮き上がる」と語る。

 松尾の演出は細かい。身ぶり手ぶりで指示する。「大人計画の芝居が目の前で見られる。明るさと暗さがバランスよく混じり合う個性的な演技が勉強になり、大人計画から参加した俳優との間で生まれる何かを、財産として持ち帰りたい」


「染ちゃん」なんてさらりと言えるのは大竹さんならではという印象。歌舞伎の「表に出すと怒られるような」裏話、気になります・・・

8/18追記:参考リンク:
shinの観劇Log@小劇場系」さんに掲載されていた劇評記事リンクを追加。

染五郎、松尾スズキ新作で主演 人間くさい役、地味に(asahi.com:2008/08/08)

【週末観シュラン】演劇「女教師は二度抱かれた」(msn産経ニュース:2008/08/08)

[評]女教師は二度抱かれた(Bunkamura)(YOMIURI ONLINE:2008/08/13)

 テネシー・ウィリアムズの「欲望という名の電車」に着想を得た作品。「欲望――」では、元教師のブランチは少年との関係を問われて職を解かれ、狂気に陥る。諒子(大竹しのぶ)もまた、同様の過去を背負う。能で言う「物狂い」の女。彼女は豊かな感情表現で、観客の心をつかんで離さなかった。

既視感は「欲望~」からのインスパイアというだけでなく、「物狂い」だったのか。納得。
とするとワキにあたるのは天久(染五郎)か、それとも鉱物(浅野)か。

8/19追記:参考リンク:
「女教師は二度抱かれた」松尾スズキが独特の切なさ表現(asahi.com:2008/08/19)

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