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2007/12/10

松本隆さんが台本を書くオペラ「隅田川」

先週たまたま読んだAERA 2007年12月10日号のインタビュー記事「現代の肖像」が松本隆さんでした。
その中で、松本さんが能の隅田川を元にしたオペラを上演するということが書かれていてびっくり。
ポップスのヒットメーカーだった松本さんと能楽というのが。意外な取り合わせだったもので。

東京文化会館のサイトにある公演案内を見てみましょう。

東京文化会館 舞台芸術創造フェスティバル 松本隆×千住明 新作オペラ 「隅田川」(演奏会形式)

隅田川は世阿弥の長男、観世元雅の能楽作品で、人買いにさらわれた愛児の死を知った母親の悲嘆を描く悲劇ですが、この物語を題材に、ジャンルを超えて活躍する松本隆が台本を、千住明が音楽を担当し、新たなオペラ作品として世に送り出します。 演奏会形式をとる本公演ではソロ歌手3名をオーディションで決定しました。 松本隆×千住明の曲に、若手ソリストたちが挑み、今回の公演のために特別に集められた秀逸なアンサンブルとともに、日本の伝統芸能とクラシックの斬新な融合による魅力的な舞台作品を創り上げていきます。この画期的な公演を皆様ぜひともご堪能ください! 「隅田川」上演前に松本隆と千住明のプレトークがあります。(司会:頼近美津子)
実はオペラというものはほとんど観たことがなく、唯一経験があるのが「夕鶴」だったりするので、イメージする対象として充分かどうかはわかりませんが、あんな感じで現代語に詞章を置き換えて歌うんでしょうね。装束はどうするのか、作り物は使うのか、興味津々です。

AERAのインタビュー記事によると、なぜ能をオペラで、と考えたのか、ということについて松本さんはこんな風に語っています。

「『はっぴいえんど』っていうバンドは、東洋と西洋の融合だと思うのね。それをロックというジャンルの中でやっていた。なぜロックなのかといえば、みんな、なぜジーンズをはくの?というのと同じこと。で、今度のオペラは、スーツみたいなもの。日本製のスーツがあったっていいんじゃないということだね」

そのはっぴいえんどを解散して、食べるためになった作詞家だったのが、「木綿のハンカチーフ」などのヒットでその後ずっとヒットメーカーでい続けた松本さんは、「擦り切れた」状態になってしまったそうです。それで90年代には仕事のペースを落とし、「歌舞伎や能の観劇のスケジュールを、手帳が真っ黒になるほどに書き入れ、見て回った」とのこと。

子どもの頃文学全集を読みあさったという文学少年だった松本さんが、超多忙な日々の中で蓄積した読書という財産を使い果たしたと感じた時に立ち返ったのが伝統芸能の世界だった、ということに、今お能を習っている自分自身との接点を見つけたような気がして、私は勝手な親近感を覚えてしまいました。昔から続く芸の持つ深み、お話の持つ含蓄、時空を超えた「生きる」ことの表現、そういった様々なものが栄養豊かな食べ物のように静かにしみわたってくるように感じているからです。

とは言え古語の世界はその難解さが敷居を高くしているのも事実。能楽という物語の宝庫から、これはというものを取り出して、希代のヒットメーカーがやさしい言葉に置き換えて現代に伝えてくれるというのは大きな意味のあることだと思います。
オペラ「隅田川」が成功するよう、陰ながらお祈りしております。

参考リンク:
松本隆氏のファン著名人でコンピCD(Sponichi Annex:2007/11/12)

台本に初挑戦したオペラ「隅田川」が12月15、16日に東京文化会館で上演。子供を誘拐された母親が、京都から武蔵の国まで探しに来る同名の能が題材で「古文を僕の易しい文体で書いてます。スッと耳に入ってきますよ」という自信作。ロック、ポップスを制し、クラシック界に挑むが「勝算はあります」と話す。

12/13追加
松本隆+千住明 異色コンビでオペラ(asahi.com:2007/12/13)

松本は言う。「能の空気感を崩さず、僕のスタイルで口語に移し替えた。感情を直接出さない日本人はオペラに向かないと言われるが、抑制した表現で深い内面を出す技術は能で実証ずみ。この様式を生かし、豊かな表現を目指した」

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