STAGE 能「砧」 狂言「寝音曲」 他(銕仙会青山能)
久しぶりの銕仙会青山能。夜の空気はすっかり秋の涼しさ。
番組と主な配役は下記の通り。
・仕舞 「俊成忠度」キリ 鵜澤 久
・狂言 「寝音曲」(ねおんぎょく)
シテ 太郎冠者 野村 万蔵
アド 主 野村 扇丞
・能 「砧」(きぬた)
前シテ 芦屋某ノ北方
後シテ 北方ノ亡霊 浅見 真州
ツレ 夕霧 長山 桂三
ワキ 芦屋某 森 常好
アイ 下人 山下浩一郎
笛 一噌 隆之
小鼓 曾和 正博
大鼓 柿原 弘和
地謡 観世銕之丞 ほか
最初から最後まで目が離せない、強烈に引きつけられる舞台だった。
仕舞は鵜沢さんの小気味いいきびきびとした動きに修羅の世界をかいま見、狂言「寝音曲」では万蔵さんが「海士」の謡と仕舞を滔々と行い、芸達者ぶりを見せつける。
そして何より「砧」。
お舞台が終了し、シテとワキが退場しても見所はしんと静まり返るのみ。囃子方が幕に入り始めるころ、ようやく拍手が沸き起こり、それは笛方が完全に退場するまでやむことはなかった。こんなにも緊張感と満足感にあふれたお舞台はめったにない。本当に、本当に、すばらしかった。
「砧」は、都に上って三年もの間戻らない夫を思う妻が、また今年も帰らないと告げられて命を落とし、戻った夫に亡霊となって恨みを述べるが夫の回向にやがて成仏する、という話である。
季節はまさに秋。松風が吹き、虫の音が響くうら寂しさの中、本来は賤民の使うものである砧を、せめて夫に自分の思いが伝わるまいかと「ほろほろ、はらはら」と打つ姿には目頭がぐっと熱くなった。
またラスト近く、夫に向かってその不実をなじって扇を振り下ろすその瞬間にかいま見えるくやしさ、かなしさ、そして寂しさに、またもぐっと来てしまった。
地謡とシテのシームレスな呼応、それを彩る囃子、それらが渾然一体となって舞台の上にとてつもない磁場を生み、三間四方の舞台の上に私たちの心を引き寄せて離さなくなっていた。特に地謡のすごいこと。強弱高低変幻自在のうねりを見せ、ただただその波に呑まれるばかり。地頭の銕之丞さんを中心に舞台いっぱいに気の溢れまくる地謡だった。
終了後の小講座、今年度は装束について。毎回次回のシテが装束を紹介するのだが、来月の青山能は柴田先生シテの「隅田川」ということで、地謡終了後の柴田先生が眼鏡をかけて登場。物狂女の装束ということで、唐織を腰で半分たらして水衣を上に羽織り、丸い傘をかぶって笹を持つと「隅田川」のシテできあがり、という図。丸い傘は観世流だけで、他の流派は男性女性ともに三角の傘を使うとのこと。短い時間ではあるが装束などについてのお話を実物を使いながら演者から聞けるのは貴重な機会なので、終演後お時間ある方はぜひお聞きいただければ。
参考リンク:
青山能 「砧」(柴田稔Blog:2007/09/28)
#今回は珍しく太鼓のない演出で行われたとのこと。
装束の特殊なつけ方(能楽事典:能楽とは:装束)
#「砧」を使った「風天」収録巻。
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