銀座で観世流能楽師・片山伸吾さんのお話を聞く
まずはプロフィールページを一部引用して片山伸吾さんのご紹介を。
観世流能楽師準職分。幼少より、父慶次郎及び人間国宝9世片山九郎右衛門に稽古を受ける。昭和47年、3歳の時、仕舞「鶴亀」にて初舞台。
昭和51年、能「岩船」にて初シテを勤める。以来「石橋」「乱」「道成寺」「望月」「三輪・白式神神楽」等を披く。
『花習塾』を主宰し、能の新たなる可能性をもって普及に努める。映画「宋家の三姉妹(平成11年日本公開)」や舞台「カタストロフィ」「源平の風」等に出演。また「同世代のふたり」では市川右近と共演するなど、積極的に異分野との融合を行う。シカゴ、デトロイト、サンアントニオなどでの海外公演にも参加する。祖母は京舞井上流先代4世家元の故井上八千代(井上愛子)。現5世八千代はいとこにあたる。
現5世八千代さんは観世銕之丞さんの奥さま。ということはいつも観能でお世話になっている銕仙会さんと浅からぬ縁をお持ちの方ということで、勝手に親しみを感じつつお話をお伺いしていました。
開口一番「お能はわかりにくいと思われていると思います。演じている方でも、正直わかりやすいとはいいにくいです。ただ、わかりやすいもののように『こう見るもの』と決めつけない、いろんな見方ができ、想像力がはたらかせられるところが逆に能の魅力だと思います」との言葉。私がお能に惹かれているのも、そういう自由なイメージでとらえられるところなのかもしれないなあ、とこの言葉を聞いて思いました。
オリジナルテキストをご用意いただき、能の歴史、役職及び流儀について、役名について、形式について、曲種について、舞について、能舞台の構造と、基本的なことを演者の立場からわかりやすくお話しいただきました。
バックステージツアーの時に柴田さんからお伺いした、能舞台では足の裏の感触で橋掛リから横板(囃子方さんたちのいるところ)、本舞台への移り変わりを察知するといったことも紹介。
曲種について、それぞれ大雑把に言うと初番目物(脇能)は「神」、二番目物(修羅物)は「男」、三番目物(鬘物)は「女」、四番目物(雑能)は「狂」、五番目物(切能)は「鬼」という説明を受け、納得。実際は一、二、三、五に入らないものは全て四になり、物語性が一番高いとも言われてました。それぞれ実際の舞台のDVD映像を使って補足していただき、一番は「高砂」、二番は「屋島」、三番は「井筒」、五番は「野守」、四番は「安宅」の一部。(記憶違いがあったらご容赦下さい)
また、「道成寺」の開始前の鐘吊りの様子や、急之舞に移って鐘入りする様子、「隅田川」で母親と子どもの亡霊が一瞬出会うクライマックスのところなど、能楽師の方の解説を聞きながら見るとまた新しい視点で観ることができ非常に面白かったです。
会場には装束の一部(唐織、長絹、腰帯など)も展示され、また小道具としていろんな扇や、面を小面と若女を使ってご紹介。ほおのこけ方、髪のほつれなどで年齢を表すんだそうです。上向きを「照る」、下向きを「曇る」ということをここで初めて知りました。そう言えば柴田さんのブログのコメント欄でもそんな用語が使われていたような。面の特徴としては「左右非対称」なんだそうです。人間の顔はアシメトリーが特徴で、それによって陰と陽が顔にうまれるとのこと。
参加者が実際に面をつけてみるコーナーもあり、視野の狭さを体感されていました。
最後は謡体験。「高砂」より祝言の時によく歌われるという「四海波」を片山さんと一緒に謡ってみますが、なかなか難しいですね。バックステージツアーの時は「高砂」のところを柴田さんと一緒に謡ってみましたが、その時もちょっと節回しが入るとついていけなくなり大変でした。
講演終了後は軽食とシャンパンでミニ懇親会。参加者からの質問コーナーもあり、「好きな曲はありますか?」という質問には「今までどの曲も初演だったのであまりふり返ってる余裕はありませんでしたが、三輪は好きな曲ですね」とのお答え。
私は「同じ観世流で京都と東京の違いはあるのでしょうか?」と質問。片山さんは「観世流は自民党みたいなものだから、最大勢力で一番数も多く、やはりそれぞれ型に違いを感じることもあります。一番驚いたのは東京の地謡の速さ。京都の1.5倍早くてとまどいました」と答えてらして「そんなに違うんですか!」とびっくり。
会の終わりは片山さんの「一度に全部を知ろうとするのではなく、少しずつわかるところを広げていく、そういうジャンルなのだと思っています。」という言葉で締められました。
あっと言う間の2時間、とても楽しかったです。
舞台の他にもさまざまな普及活動を行っていらっしゃる片山さん。今度はぜひ京都の舞台に立っていらっしゃるところを拝見したいと思いました。
2/6追記:
銀座もとじさんのサイトに開催報告がアップされています。
「「能へのいざない」レポート報告」
「いっぺんに全てを知ろうとせず、知らないことを1割1割と足していく見方で楽しんでいただきたい。和の世界は難しいと始めから嫌わないでほしいですね。自分の“好きの可能性”を探してほしいです」とメッセージをいただきました。
参考リンク:
泉二のひとくち対談 第23回 : 能楽師 片山伸吾(かたやましんご)さん
#銀座もとじ社長との対談です
関連エントリ:
銕仙会さんの虫干し(2006/07/30)
第一回「能舞台バックステージツアー」参加レポート(2006/07/05)
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