感想:「ブロガー×オーマイニュース『市民メディアの可能性』」シンポジウム
先日ご案内した「ブロガー×オーマイニュース『市民メディアの可能性』」シンポジウムにスタッフとして行ってきました。
当日は主に受付をやっていましたが、途中から議論も聞けましたので、スタッフ兼参加者として感想などを書いておこうかと思います。
当日の様子はパネラーだったH-Yamaguchi.netの山口浩さんが「オーマイニュース:シンポジウム録音ファイル公開」というエントリでMP3ファイルを公開されていますので、詳しい内容についてはよろしかったらそちらもご確認下さい。
定刻を過ぎて会がスタートしたあとも、鳥越編集長退席まではぱらぱらと受付が途絶えず、中に入って聞くことはできませんでしたので、漏れ聞こえてくる言葉を耳にするだけでした。後半は中に入って何とか後ろで聞けましたが。
ガ島通信の藤代さんがエントリ「[イベント]ブロガー×オーマイシンポジウム「アンケート」概要報告」でアンケートの回答を公開してますが、参加者については「参加者はスタッフも含めて約100人。新聞社の記者やライターが最も多く、テレビ、メディア研究者、IT企業の方、大学生・大学院生などです。ブログを持っている方は28人、市民記者に登録されている方は9人でした。」という状況。予定していた動画配信が技術的問題で中止になり、「動画が見れなくて、満員でダメかもしれないけれどどうしても聞きたくて来ました」と言って直接会場にいらっしゃる方も。その熱心さにスタッフながら驚きました。
会場では活発な議論があり、オーマイニュース編集部の回答内容には首をかしげるものもないわけではなかったけれど、かなりつっこんだ内容の質問にも一生懸命説明しようとしている態度が全面的に感じられました。
アンケートでシンポ前の印象は辛辣なものが多かったのが、シンポ後には「市民記者登録を決心した」という方を始めとして前向きなものが多く見受けられるのは、そういう姿勢が評価されたのかもしれません。
特に「ネットに弱い鳥越さんは編集長を引退したらどうか。鳥越さんには勤まらない」と、本人を目の前にして普通そこまで言うか、と思ってしまった会場からの発言のあとに鳥越さん本人が言った言葉は、大なり小なり会場にいた人達の心に響いたのではないかと思います。
鳥越さんはこんな風に言ってました。
「僕はガンの再発の可能性を抱えている。現に今も肺に陰があるといわれている。家族や医者も友人からもそんなハードなことはやめろと言われたが、新しいことをやるということに好奇心の虫がうずくものだから。実際には自分は実務はやれてなくて、いろんな人のインタビューとか、立ち上げまでの広告塔みたいな存在なんですよ。引退しろと編集部全体が言うならいつでも引退します。ただ僕はやってみて面白いなあ、と、きょうもこんなに集まってくれるし、インターネットの世界ってけっこう面白いなあというのがあるんで、簡単に引退はできないなあ」
最近ネット仲間をガンで亡くし、生前彼からガン患者として生きるということがどういうことかいろいろと聞いていた私には、この言葉はとても重みを持って感じられました。こういう鳥越さんの「志」を直に感じられたのが、今回参加して私にとっての一番の収穫だったかもしれません。
(こんなに感動したあとだったので、その後2chについての発言を巡ってITmediaの岡田記者と言った言わないの話になったのは正直がっかりでしたが。)
ただこういう「思い」の一方で、他の方からも数多く指摘されてますが、インターネットの中でのニュースサイトを運営するには、編集部はネットに対してあまりにもナイーブ過ぎるのが非常に気になりました。文字や写真が乗るのが紙からディスプレイに変わっただけ、と思っているのではないかと思ってしまいます。
はてなブックマークやmixiを知らないというのもさることながら、RSSやトラックバックを実装していないというのは、2006年というこの時期にネットでビジネス起こすには自殺行為に近いと思うのです。RSSで存在を知らせないでどうやって広く伝えるんでしょう。トラックバックを受け付けないで、もしくはしないで、どうやって他のサイトとリンクするんでしょう。RSSなしリンクなしでは、検索されない(されてもかなり下位になる)ということで、それはネットの中では「存在しない」に等しいことでしょうに、そういうことを設計段階で考慮しないというのが信じられない気分です。
新聞で言えば販売店一軒だけとりあえず置いて、あとは買いに来てくれるのを待ってます、ということではないんでしょうか、そういうのって。せめてそういう部分に長けてる人を専門スタッフとして入れるということはできないのかなあ、と思います。
あと気になったのは、山口さんと磯野さんが繰り返し口にしていて、徳力さんも会場から質問してましたが、「読者をどう考えているの?」ということです。どんな人達に読んでもらおうとしているのか、その人達にどうやって知ってもらうか、読んでもらうか、それを一から開拓していかなければいけない立場にいるという自覚をどこまで持ってらっしゃるのか。オーマイ編集部からの答は書き手の話ばかりで、かみ合わない答を聞きながら疑問は深まるばかりでした。
一番後ろの座席で、オーマイニュースインターナショナルのオ ヨンホ社長が逐次通訳をつけて熱心にPCに記録を取っていました。最初から最後まで退席することなくきちんと聴かれていた彼の耳には今回の議論はどんな風に聞こえたのか、非常に興味があります。
ともあれ、スタッフとして、当日行き届かないところがあったかもしれないと思っています。その点お詫び申し上げます。
当日の様子を書かれた記事リンク集を、FPNの徳力さんとガ島通信さんがまとめていますので、興味のある方はそちらもぜひご覧ください。いろんな方の視点から当日の様子を知ることができます。
「ブロガー×オーマイシンポジウム」イベントレポート集(FPN:2005/09/05)
[イベント]シンポについてのブログ・記事一覧(ガ島通信:2005/09/05)
関連リンク:
[ネット]シンポでの鳥越編集長発言にITmedia岡田記者が反論(ガ島通信:2005/09/05)
「批判があれば記事を書いてほしい」オーマイニュース鳥越編集長(ITmedia News:2005/09/04)
オーマイニュースと著名ブロガーが「市民ジャーナリズムの可能性」を討論(INTERNET Watch:2005/09/04)
「オーマイ」編集長、ブロガーに参加を呼びかけ(日経メディアラボ:2005/09/02)
#私の知る限り、ニュースサイトでは最速でした
関連エントリ:
イベントご案内:「ブロガー×オーマイニュース『市民メディアの可能性』」(2006/08/25)
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