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2006/05/04

MOVIE 「かもめ食堂」

あたりまえの、すこやかな食べ物を食べる時の幸せ。そんな幸せを分け合える人達との出会いのうれしさ。
人は変わっていくけれど、今この瞬間を素直にこつこつと生きていけば、きっとそれはいい変わり方になる。
かもめ食堂」は、そんな平凡な真実を、押しつけがましくなくふんわりと実感させてくれる映画だった。

※以下内容に触れているため、未見の方はご注意ください。

主要キャストが小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ(この3人と言えば名作ドラマ「すいか」!)で、舞台はフィンランド。「かもめ食堂」という日本の家庭料理を出す食堂を経営する話。そう聞いた時から「観たい!」と思っていた作品だった。

ブルーと白を基調としたインテリア。白木の椅子。ステンレスのオープンキッチン。こんなカフェが日本にあったら入り浸ってしまいそうなセンスのいい、居心地のよさそうな「ruokala lokki」(かもめ食堂)。だけどヘルシンキの人達は日本人のように人見知りなのか、異国の大人とも子供ともつかない女性・サチエ(小林聡美)が一人でやっているらしいこの店にはなかなか入ってきてくれない。しかし今や日本と言えばアニメ。アニメ経由で日本びいきになった少年・トンミが初めてのお客様として来てくれた日から、彼からの質問「ガッチャマンの歌の歌詞を全部知りたい」をきっかけとして出会った日本人女性・ミドリ(片桐はいり)、謎のコーヒーおたく?のフィンランド人男性、遠巻きに見ていたおばさん3人組など次々と輪を広げ、空港でスーツケースを紛失してしまった女性・マサコ(もたいまさこ)も加わって「かもめ食堂」は幸せの輪を広げていく。

日本人3人の登場人物はそれぞれ何かあって日本を離れて来たのだと思うのだが、多くは語られない。小林聡美演じるサチエの凛とした美しさはそんな詮索をよせつけず、今ここできっちり真面目に生きていこうとするすがすがしさにあふれている。片桐はいり演じるミドリの時折見せる陰も、サチエと店をやっていくうちにだんだんと消えていき、ヘルシンキの風景に溶け込んでいく。もたいまさこ演じるマサコはスーツケースをなくして足止めを食らうことで逆に自由になり、マリメッコのポップな服を着こなしたり、夫に出て行かれた女性と言葉がわからなくても心を通わせたりする。その様子がなんだかとても心地よい。

そして何より、おいしそうな食べ物の数々。お客を広げた焼きたてのシナモンロールは、画面で見ていてもぱりっとした皮から甘いシナモンの香りがしてきそうで、思わず帰りに別物とはわかっていながらスタバでシナモンロールを食べてしまったくらい。焼き鮭、しょうが焼き、とんかつ、肉じゃがといったごく普通の日本の家庭料理がフィンランドの空気にすんなりとけこんで、満足そうな表情で食べてられているのを見ると、自分が作った料理を食べてもらっているような錯角に一瞬陥ってしまった。ビバシンプル家庭料理。

マサコが食べるところをフィンランド人のみなさんが興味津々で見つめたおにぎり。外国人から見ると不思議な食べ物なんだろうなあと思う。海苔が不気味な人もいるらしい(カリフォルニア・ロールが海苔を内側に巻き込んでいるのはそのため)。それは何?と聞かれたサチエが「日本人のソウル・フード」と言うのは実にいい得て妙。

何気なく使われている食器やサチエ、マサコの着ている日常着やサチエの家のインテリアなど、どれもこれも「ああ、いいなあ」と感じるセンスのよさもツボに来た。
できることなら、何度も何度も繰り返し観て、いろんなことじっくり感じたい、そんな風に思う作品だった。

「かもめ食堂」オフィシャルブログで「大ヒットスタート!」とあるように、シネスイッチ銀座、109シネマズMM横浜で3月11日に始まった公開は初日全回満席、シネスイッチ銀座の初日動員記録を塗り替える大ヒットスタートを切ったとのこと。その後も順調に上映館が増えていき、「かもめ食堂」の幸せの魔法に包まれる人達が増えているのはとてもうれしいこと。

Ruokala_lokki「かもめ食堂」の世界が気に入ってくださった方には、ぜひパンフレットを購入することをおすすめ。スーツケース型で外見からしてとてもかわいい。内容も、作中でミドリが描いた(ことになっている)メニューやフィンランド豆知識など、作品をより深く理解できるとてもステキな作りになっている。

ヘルシンキで撮影に使われた「カフェ・スオミ」にふらりと立ち寄ってみたい、ついそんな風に思ってしまい、“フィンランド行ってみたい指数”をぐっとあげる効果絶大の映画。その日まで、パンフレットは大切に取っておこう。

5/5追記:
・・・と思っていたらもう既に行かれた方がいらしてびっくり。「スウェーデン織のアトリエから」というブログを書かれているdalahastさんのエントリ「旅その3 かもめ食堂」でその様子をレポートされている。

映画を観て日本からやってきたことを告げると、すごくびっくりして、そしてすごく喜んでくれて映画の撮影裏話や大阪で開催された試写会に行って監督や女優さんたちに再会した話など楽しいお話がたくさん聞けました。オシャレなカフェというよりは常連さんが集う下町の食堂といったとっても素敵な場所でした。映画から伝わるなんともいえない幸福感はこのお店だからこそだったのかもしれません。

コーヒーカップとナイフとフォークの看板も映画のままで。「かもめ食堂」の文字もちゃんと残っていて。ああ、いいなあ。
こんな風に訪問する人達がこれからもきっと増えていきそう。

関連記事:
「かもめ食堂」~愛すべき負け犬たちの最後の晩餐~(カトラー:katolerのマーケティング言論:2006/05/04)
#映画に通奏低音として流れている「虚無感」について書かれている見事な映画評。
そういった虚無感を抱えつつ人と関わって生きていく様子が描かれているからこそ、この映画は胸にしみるのだと改めて思う。
カトラーさんがご覧になった劇場では30代女性がほとんどだったらしいが、私が行ったところはなぜか老若男女とりまぜて雑多な客層だった。銀座と川崎という場所柄の違いだろうか。(川崎・チネチッタで5月12日まで上映中)

かもめ食堂
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5 もたいまさこの名言
5 とにかく見て損無し!
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コメント

今更ながら、DVDでかもめ食堂を見ました。
この映画を見たいろんな人の話を読みたくてこのページに来ました。
(一緒に見ていたのが6歳の娘だったので)
このページのあらすじ+αの情報が美しくまとめられていて読みやすく、また実際にあるお店の話も読めてよかったです。
淡々と静かにそして温かに広がっていくかもめ食堂の和が素敵な映画でしたね。
では。

投稿: ツインズママ | 2009/09/09 12:57

>ツインズママさん

こんにちは。コメントをいただきありがとうございます。
「かもめ食堂」はいろんなシーンを思い出すと、今も胸がじんわり暖かくなります。ステキな作品ですよね。

投稿: くりおね | 2009/09/16 00:18

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