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2006/03/26

BOOK 「ウェブ進化論」 梅田望夫

今まさにこの時に発刊されるべき「旬」な本というものがあるならば、2006年初めのこの時期は梅田望夫氏の「ウェブ進化論」だろう。
この本が発売された2月7日から今日までの約2ヶ月の間も、ソフトバンクのボーダフォン買収を筆頭に、IT業界は日々実にさまざまな出来事が起き、次々と新しいサービスや旧来のサービスのいいとこ取り(かっこよく言うと「マッシュアップ」)がプレスリリースされている。
そういう出来事がどういった背景から生まれているのかを、「いやあ私パソコンは苦手でね」と頭を掻いてしまう方にも取りかかりを作ってくれ、ばりばりブログを書いて新しいWebサービスの恩恵にどっぷり浸っている人にはおさらい的に、どちらの世界の人達も視野に入れて書かれているのがこの「ウェブ進化論」なのだ。

インターネットという革命的なツールが世の中に起こしているのは、「個の行為の集積の価値化」なのだ、という部分が、おそらくはいわゆる「エスタブリッシュ層」には一番理解しにくいのではないかと思う。リアルな目に見える「こちら側」の価値を追求してきて、そこで成功してきたのだから無理もない。シックス・アパートの野間さんがブログ「のまのしわざ」にアップしている、アメリカ・マウンテンビューにあるComputer History Museumで見てきた実にさまざまな歴史的コンピューターたちの写真を見ると、そのボリュームと進化ぶりに圧倒され、これを作ってきた張本人やその歴史を知っている人達はそう容易には「こちら側」からネットの「あちら側」に技術や資本を集積しようとはなかなか考えにくいのだろうなあ、と思う。
(そのあたりの対立の根深さは、リアル社会でのオープンソース現象の普及スピードの遅さという観点からも本書の中で触れられている。)

しかし、誰もが当たり前のように新聞と同様にネットのニュースを見て、物によってはチラシ比較ではなくネットで価格比較するのが主婦にも当たり前になってきていて、地下鉄で会社帰りの若い女性がミクシィでの出来事を同僚と語るこの時代の流れはおそらく止めることはできない。副題にもある「本当の大変化はこれから始まる」今、「こちら側」にいたいエスタブリッシュメント層と「あちら側」にいたい若年層がどう手を取り合い、次の時代に歩んでいくか。その橋渡しツールとして書かれたのがこの「ウェブ進化論」なのだ。その思いの一端は梅田さんのブログエントリ「『ウェブ進化論』: あとがきの一部、発売日の東京でのイベント」にも引用されているので、まだ本書を手に取られていない方はまずはここだけでも目を通していただければ。

私自身は「ネットに住んでる」とまではいかなくても、一応ブログを書いたりしていてこの世界に触れる時間は長い人間なのだが、そういう立場からも、また一方IT業界の中でキャリアカウンセラーとして働く立場からも、この本は興味深い記述が多かった。前者の立場から興味をひかれたのは上に書いたような「あちら側」の世界の急速な進化をGoogleを例にとって説明された部分だが、後者の立場からはこんなキーワードが響いてきた。(引用ではなく要約)

「個の信用創造装置・舞台装置としてのブログ」
「雇用流動性の高まりで内向きの理論だけでは活きていけない。組織に属しながらも外を常に意識する必要がある」
「日本のエスタブリッシュメント層は一度も人生で組織を辞めたことがない人達で現状占められていて、その理論で成り立っている」
「9.11をきっかけとした人生の方向転換」

最後の方向転換の話は梅田さん自身のことだが、それが41歳と言う年齢だったというあたり、ユングの言う「人生の午後」にまさに符合するエピソードだと感じた。これまで自分が目を向けて来なかった自分自身や生き方に方向を転じエネルギーを向けていくことで、人間としての全体性を高めていくことができるとユングは言っている。あたかもそれを実践するかの如く、人間関係の重点を年上から年下へ切り換え、仕事のベクトルも脱エスタブリッシュメントを図っていこうとするのは、そう容易なことではないと思うが、それでもそうしたいというご自身を強く突き動かす何かがあったのだろうし、その力がこの「ウェブ進化論」を書かせたのだとも感じる。

何より切り口が多彩で、いろんなキーワードやフレームワークが提示されているので、それぞれ読む人によって響く部分が違ってくると思われる。そういう意味でも非常にエキサイティングな一冊。

ウェブのこれまでとここからを知りたい方、そして、それを他の人に説明したい方に、心強い参考書となるだろう。
ぜひお手許に。
H-Yamaguchi.netの山口さんの言葉を借りれば、「ウェブに関わるすべての人に。」

おまけその1:
実はこの本は発売日の翌々日には購入していた。書店の新書の平積みの中で「ウェブ進化論」だけが妙に少なくなっていて、急いで購入しておいたらこれが正解。その後一時期品切れとなり重版を重ねていたようで、僅差のタイミングで貴重な(?)初版を入手できた次第。そこから二カ月近くたってようやくどうにかこの記事を書くことができ、影響されるのを少しでも避けたくて読めなかった他の方の書評がようやく解禁に。ああよかった。

おまけその2:
記録として、最近のランキング結果を掲載しておく。この系統のものがこれだけランキング上位になること自体、すごいことだと思う。これが「リアルの世界で影響を持つ」ということなんだな、と実感。

【NIKKEI.NET ランキング】
ノンフィクション系(東京・八重洲ブックセンター)
3月12日~3月18日 第二位

文庫・新書(東京・八重洲ブックセンター)
3月12日~3月18日 第三位

新書(紀伊国屋書店)
3月13日~3月19日 第二位

【asahi.com book ランキング】
東京・ブックファースト渋谷店(総合 2月13~19日)
第一位

東京・八重洲ブックセンター本店(総合、2月26~3月4日)
第二位

Amazon.co.jp(和書総合、03月13日~03月19日)
第三位

東京・八重洲ブックセンター本店(総合、3月12~18日)
第二位

Amazon.co.jp(和書総合、03月20日~03月26日)
第二位

3/30追記:
asahi.comの書評欄「話題の本棚」でダン・ギルモア氏の「ブログ」などと一緒に取り上げられていた。テーマは「ネット社会どう生きる」。

 2月の刊行以来、20万部を超えた梅田望夫『ウェブ進化論』はITの革新による「チープ革命」、とくに無償の情報共有ツールである検索エンジン「グーグル」やブログなどのネット世界が、旧来の社会秩序や知的権威に再編を迫る現状を丁寧に紹介。それを「革命」といい、希望と痛みが交差するウェブ時代をいかに生きるかを示唆する。

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久しぶりのヒット本に当たりました。知的興奮状態。 『ウェブ進化論』(梅田望夫著) ※本書は「スパルタ読書塾」(→記事はこちらでご紹介しています)コミュニティでご紹介い [続きを読む]

受信: 2006/04/13 17:42

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