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2006/02/28

STAGE 能「隅田川」 狂言「棒縛」 他(岡田麗史の会)

今年最初の能楽観賞は「第七回 岡田麗史の会」。冷たい雨が強く降る中、渋谷・松濤の観世能楽堂へ。
番組概要は下記の通り。

・ 素謡「経正」
シテ  平経正 観世榮夫
ワキ 僧都行慶 若松健史
地謡  谷本健吾
     西村高夫
     観世銕之丞
     馬野正基

・狂言「棒縛」 
シテ  太郎冠者  野村万蔵
アド     主  山下浩一郎
小アド 次郎冠者  吉住講

・能「隅田川
シテ 梅若丸ノ母  岡田麗史
子方   梅若丸  小早川康充
ワキ    渡守  宝生欣哉
ワキツレ  旅人  則久英志
           
       笛  松田弘之
      小鼓  鵜澤洋太郎
      大鼓  國川純
地謡
   長山桂三  西村高夫
   浅見慈一  浅見真州
  柴田稔 野村四郎
   小早川修  浅井文義
後見  清水寛二
     観世銕之丞

今回は正面席、前から二列目の中央近くという舞台に非常に至近な位置。声もよく聞こえ、動きもよく見えて迫力満点だった。

「素謡」とは、「舞も囃子(はやし)もなく、謡(うたい)のみで演ぜられる演能形式。」とのこと。舞台上でななめに二列に並び、シテとワキが前列、地謡が後列。
曲は「花よりも花の如く」1巻で主人公・憲人が演じた「経正」。
シテが昨年の袴能ですばらしい舞台を見せてくれた観世榮夫氏で、今回も琵琶を大切にしていた青年・平経正の亡霊を雅やかに演じていた。声だけで演じられるため、舞いを見るよりさらに現実感が薄れ、夢とうつつの間を行きつ戻りつするような、何とも幻想的な舞台だった。

「棒縛」は、ホールなどで能楽が催される時にかなりの割合で演じられる、有名な曲。ストーリーは簡単で(まあ狂言の話はだいたいシンプルでわかりやすいのだが)、主人の留守にこっそり酒を盗み飲んでいたのがばれた使用人二人が、一人は棒に縛られ、一人は後ろ手に縛られたまま主人が外出するのだが、その状態で酒蔵に入り酒を飲んで舞い歌い、そこに主人が戻ってきて、、、というもの。縛られても酒を飲もうとして滑稽なしぐさになりながらも思いを遂げる様子が何ともおかしい。図々しいというか、したたかと言うか。万蔵さんの満面の笑みが豪快で見て気持ちいい。

能「隅田川」も有名な曲。能楽師ブロガー・柴田稔さんも地謡で出演されており、早速「隅田川」」という記事を書かれていた。

物語としては次のような内容。
人買いにさらわれたわが子を探し、都から東国までやってきた母は「物狂い」となりながらも必死に子供を探し続け、隅田川を渡るため船頭に船に乗せてくれと頼む。川の向こうに念仏を上げた法要の様子が見え、同乗の商人が何事かと訪ねると、ちょうど1年前に人買いに連れられ弱った子供が打ち捨てられて死んでしまった、その子の供養だと言う。しかしその子供こそが、母が探し続けたわが子であった。激しく悲しむ母の前に、、、。

船中で船頭が子供の名を言い、それを母が繰り返す。繰り返して、そうして母は息子に起きた悲劇に打ちのめされる。母の慟哭と供養の鐘の音、南無阿弥陀仏の念仏に、やがて清らかな子供の声が入る一瞬。塚から子方が出てくるが、かき抱こうとする母の手をすり抜け、ふたたび地中に帰っていく。一人残された母親に見えるのは塚の上の草の揺れるさま。

どこまでも救いのない、ただただ悲しいままで終わる曲だ。こういった悲劇はどこの文化でもたいてい物語として存在しており、共通のテーマなのだろう。
子方の声が聞こえた瞬間、胸が撃ち抜かれたように痛み、すれちがう親子の姿に涙があふれるばかりで。

すばらしい舞台に、静かな感動にひたりながら能楽堂をあとにした。いいお能を観れて、今年も幸せ。

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コメント

くりおねさん、こんにちは。
トラックバックありがとうございます。
隅田川は良い局ですね。
われわれもいつの新たな感動を得ています。作品が大きいのでしょうね、きっと!
今後ともどうぞ、ヨロシク。

投稿: シバタ | 2006/03/02 02:02

>シバタさん
こんにちは、コメントをありがとうございます。
隅田川はとてもいい曲だと思います。シテ方の皆さんにも演じがいのある曲なんでしょうね。
「作品が大きい」って、素敵な表現ですね。
シバタさんが隅田川を披かれる時は、ぜひ観に行きたいと思います。(「披く」って、使い方これで正しいかしら?)
こちらこそ今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: くりおね | 2006/03/02 23:27

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