BOOK「その幸運は偶然ではないんです!」
6月に来日したクランボルツ博士の最新著書「Luck Is No Accident」の日本語訳がようやく発売された。
題名は「その幸運は偶然ではないんです!」。
副題は「夢の仕事をつかむ練習問題」とあり、さまざまな事例とそこから見える「彼らが取った行動は何だったのか」という振り返り、そして章末にはそれらを自分のために活用する「練習問題」が書かれている。
構成は次の通り。
第1章 想定外の出来事を最大限に活用する
第2章 選択肢はいつでもオープンに
第3章 目を覚ませ!夢が現実になる前に
第4章 結果が見えなくてもやってみる
第5章 どんどん間違えよう
第6章 行動を起こして自分の運をつくりだす
第7章 まず仕事に就いてそれからスキルを学ぶ
第8章 内なる壁を克服する
6月30日に行われた講演会で、クランボルツ博士は「この本の中で述べられている過激な(radical)アドバイスのいくつかをご紹介します」と以下のようなことを話していた。
[NOT → INSTEAD の順]
---------------------------
make a career decision (キャリアの意思決定をする)
→ Keep your opinion open (選択肢をオープンに)
Follow your dream (夢を追う)
→ Test steps in your dream (夢を一歩ずつ確認)
Wait for a lucky break (幸運を待つ)
→ Create your own luck (幸運をつくりだす)
Don't make a mistake (失敗してはいけない)
→ Risk;Make mistakes (リスクをとれ;失敗せよ)
Learn skills,then get job ((スキルを身につけてから 仕事を得る)
→ Get job, then learn skills (仕事を得て、それからスキルを学べ)
Complete your education (教育を完了する)
→ Never stop learning (学習しつづける)
---------------------------
つまりほとんどこのまま章の見出しになっているわけだ。
「NOT」の方にあるのはこれまで「キャリア」を考えたり「成功」するために必要だと言われ続けてきたことや行動だ。それらをクランボルツはことごとく「そうとは限らない」と言い、実例を挙げる。
ここで大切なのは「そうとは限らない」という点。
Planned Happenstance Theoryそのものでも誤解されやすい部分であるのだが、「計画を立ててはいけない」「目標を持ってはいけない」と言っているのではない。計画や目標を「固定」させてはいけない、と言っているのだ。つまり柔軟性を持とう、ということ。
それを本書の中では「職業目標と“結婚”はするな」と表現している。
また、「選択肢はいつでもオープンに」の章で「“苦痛の終身刑”を拒もう」とある。これはこういうことだ。
人生のある時期に選んだ選択肢が、ある時点でもはや意味を持たなくなっていることに多くの人が気づきますが、このような状況に後ろめたさを感じる必要はありません。
目標を持つことを推奨するあまり、一度決めた目標に縛られてしまい結果不幸な職業生活を送ってしまうことに対して「No」と言っているのだ。
そして、意思決定ではなくて行動を重視する。本の中でもケースの登場人物が「具体的に何をしたのか」を振り返り、本人たちが「ただの偶然」だとさらりと述べるその物語の中に実は「偶然を作り出す行動」があったということを示している。
第1章から第7章まで書かれているさまざまなチャレンジングな行動は、「そうは言ってもなかなかできない」ことが多いかもしれない。その自分の行動を阻む「内なる壁」を克服するヒントが書いてあるのが最終章だ。
あとがきの中で、訳者の慶應大学キャリアリソースラボラトリの花田教授は「有名な俳優や政治家や、あるいは成功した経営者の成功物語ではなく、街を歩いている普通の人たちにこそいろいろなチャンスが身近に転がっている、みなさんはチャンスに囲まれている、それをつかまえよう、そういうメッセージにあふれた本とお考えいただければいいと思います。」と書いている。
キャリアリソースラボラトリで行っているキャリア自律研修(注:研修は企業内研修として実施され、そこに研修を提供している形になっており、オープンコースではない)に参加する人たちに最も多いのは「先が見えない。現状から逃げたい。自分のキャリアが不安だが、どうしたらいいか分からず、何かきっかけをつかみたい」という人たちだと言う。
彼ら/彼女らは「単純に『キャリアデザインを自分で』と言われても、どうしたらいいかわからず、藁をもつかむ気持ちで参加してくる」人たち。そんな不安にあふれた人たちに「チャンスを積極的に自分のものにしていこう」というHappenstance的アプローチを理解し実践してもらうのは簡単なことではなく、だからこそこのアプローチが「成功者の後付け理論ではない」ものとして紹介しているこの本が重要になってくるのだ。
(「アメリカではそうかもしれないけど」ということにならないよう、日本の実情に合わせるためにかなり意訳をしたり、エピソードを削除したりもしたとのこと。)
まずは手に取って、読んでみてほしい。そしてピンときた章があったらその章末にある「練習問題」を考えてみたり、「想定外の出来事を作り出す方法」のどれかを試してみたり、何かひとつ行動を起こしてみることがあなたのHappenstance的アプローチの始まりになるだろう。
関連エントリ:
Luck is No Accident:クランボルツ博士来日カンファレンス(2005/07/06)
ダイヤモンド社 (2005/11/18)
Impact Pub (2004/04/14)
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