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2005/07/06

Luck is No Accident:クランボルツ博士来日カンファレンス

以前のエントリ「“Planned Happenstance”のクランボルツ博士が来日」でもご紹介したカンファレンスが6月30日に開催され、いそいそとサントリーホール(小ホールですが)に行ってまいりました。

第一部は講演。タイトルは「プランド・ハプンスタンス・アプローチの最新動向とキャリアカウンセリング」。
壇上には左側に椅子があるのみ。どうしてかなあ、と思っているとクランボルツ博士登場。
「今日はワークショップをやるからね。私は歩き回るんだ。
ワークショップ、となると、やるのは誰だろう?
私?いや違う。皆さんですよ」
なるほど、講師用のテーブルがないのはそういうことだったんですね、と納得。

そしてその言葉の通り、博士は壇上にほとんど戻らず、ステージの真下を左右にゆっくり歩きながら、講演を進めました。1時間ずっと。それなりにご高齢ではないかと思うのですが、タフだなあ、と感心。

そしてさっそく「ワークショップ」。
最初の質問は「この中でどのくらいの方々が自分が18歳の時に考えていた仕事をしていますか?」
挙手無し。400人もいろんな人達がいる中、一人もいないんですね。

その後ご自身の子どもの頃からの出来事を話します。(同時通訳レシーバーを使わなかったので聴き取りきれなかったのと、記憶が少々曖昧なため細部は自信がありませんが、だいたいこんな雰囲気だった、ということでご勘弁を。)

「8歳の時偶然ピンポンをやるようになり、12歳でテニスを習い始め、そのまま大学に進んでテニスプレイヤーとして全力投球した毎日を送っていたある日、専攻を決めないと退学となると言われ、唯一相談できる教授だったテニスコーチに相談したところ、『そりゃあ心理学だろう』と。なぜなら彼は心理学の教授だったから。
そういう理由で今自分は心理学をやっている。
ピンポンをやらなければテニスはやらなかった。テニスをやってなかったら心理学を専攻することはなかった、ということ。 まさしくHappenstanceの結果、私は今こうして東京に来ている。」

※トラックバックをいただいた「下小路366の日記」さんの「クランボルツとディープパープルと365歩のマーチ」という記事に、より臨場感を持って書かれています。ぜひそちらもご覧ください。

話が終わって、隣の席の人と最初のワーク。
今の仕事は何か、それは自分が18歳の時に考えていた仕事なのか、ということについて一人1分ずつ。

そしてここからは用意されたレジュメを使いながらの講演でしたが、さすがにそれを全部書くわけにはいきませんので、印象的だったところをピックアップします。

・これまでのキャリアカウンセリングの目的→undeciedであることへの批判
help people to DECIDE one ideal career
でも「たったひとつの理想的なキャリア」なんて本当にあるの?

・inability to select and commit to a career choice 50% of college student
(日本と変わらないじゃん!)

・one path to go successfulではなく、millions way

・Undecided(優柔不断)からopenminded(オープンマインド)
複雑で予測不能な将来に対する賢明な対応として、優柔不断を「歓迎」する

・意思「決定」ではなく「行動」を重視

・偶然の出来事に対するスタンスを変える
従来→影響を最小限度に留めるために計画を立てることを支援する
Happenstance→偶然の出来事を作り出し、それを活かすことを支援する

・キャリアカウンセリングのケースでクライアントに「セルフ・モニタリング」をしてもらう。
 毎日の一つ一つの行動に対し「love」が10点、「hate」が1点として、 それぞれ何点になるのか。
 これをやることにより何が問題なのかより明確にする。

・夢を追う(follow your dream)のではなく、夢を一歩ずつ確認(test your dream)しよう

二度目のワークは「あなたが起きてほしいと思っている偶然の出来事を教えてください。」「その望ましい出来事が起こる可能性を高めるために、今あなたはどんな行動を取ることができますか?」「行動を起こしたら、あなたの人生はどのように変わりますか?」「何もしなかったら、あなたの人生はどのように変わりますか?」一人3分ずつ。

このワークをやりながら、「起きてほしいと思っている偶然の出来事」は確かにかなり確率の低いことを話してしまいましたが、一方で「じゃあ、もう少し起きる確度が高いことで、最初に話したことに近いことって何だろう」「それを起こすためには何ができるだろう」ということを自然と考えていて、こうやって最初は夢物語にしか思えなかったことを「本当に実現するには」というアプローチに実際自分がなっていくことを体感し、驚きました。これは元気が出ます。

タイトルになった「LUCK IS NO ACCIDENT」というのはサブタイトルが「Making the Most of Happenstance in your Life and Career」というもので、クランボルツ博士の新刊です。日本語版は慶応大学キャリアリソースラボラトリの翻訳で出版予定とのこと。

この本の中での「過激な(radical)」アドバイスがいくつかありましたが、私がいいなあと思ったのは
「Don't make a mistake(失敗してはいけない) 」ではなく「Risk;Make mistakes(リスクをとれ;失敗せよ)」

「Follow your dream(夢を追う)」ではなく「Test steps in your dream(夢を一歩ずつ確認)」(これはOK to fail とも言ってました)
というところ。
ちぢこまらないで、動いてみようよ、というメッセージを強く感じます。

15分の休憩ののち、第二部は花田教授、高橋教授が加わってのパネルディスカッション。
テーマは「キャリア形成の支援とプランドハプンスタンスアプローチ」ということで、特に企業における実践を想定した解釈と質問がとびかいました。

ここでもひとまず印象的だった発言をピックアップします。

・Planned Happenstanceの理解は、ともすると「結果の後追い」や「軽いノリ」になってしまいがちだが、本来は「強い意志」「コミットメント」を必要とするもの(花田教授)

・Curiosity チャレンジ、勇気、挑戦
・Persistence 強い意志
・Optimism パッション、成長への確信
・Risk-taking 失敗をプラスに
・Flexibility オープンマインド 転んでもただではおきないしたたかさ

・決定しないことの意義。決定の安心感に安住せず、決定しないタフさを持つ(花田教授)

・Planned Happenstanceの基本的考え方→ready to actionであること(Krumboltz)

・Planned Happenstanceを応用したキャリアカウンセリングに必要とされるカウンセラーの対応として、「望ましい出来事を導く行動の学習支援」「risk takeへの不安の除去」がある(花田教授)

・ドラマ「anego」の最終回の台詞でいいことを言っていた。 「幸せはつかみ取るものではなく、日々やるべきことをやる中にある」(高橋教授)
※高橋さんドラマをネタにするのがお好きらしく、以前はキムタク主演の「グッド・ラック」をよくネタにしてました。

・What "should" I do?→No one knows answer
 What would be fun(or useful) to try?(Krumboltz)

・Don't "stuck" objective.(目標達成型であることにこだわりすぎるな。) Change when necessary.(Krumboltz)

・伝統的人材開発(HRM)モデルでは外的満足を主としたキャリア開発で、それは目標を立てやすく、未充足でも逃げ場を用意できる(他者や環境のせいにできる)が、これから求められる自律的HRMモデルは内的満足を基準としたキャリアで、これが未充足だと個人の逃げ場を塞ぎ、強い不安をもたらす恐れがある。そのため、職場のサポートに深いものが必要である。それは行動的サポート、特に成功へのものだけでなく失敗した時にどうサポートするかというもの。(花田教授)

・一気に変わることはない。to make it "better"のつもりで。(Krumboltz)
・誰でも「成功体験」はある。smaller scale successに目を向けることが大事。(Krumboltz)

といったところでしょうか。

元気なパネラーの皆さんからHappenstanceへの期待に満ちたエネルギーをいただいた、あっという間の3時間半でした。

さてここからは余談です。
たまたまお隣に座った方が、私がお手伝いをしているトレーニングでご一緒したことのある受講生の方で、顔と名前を覚えていてくださったらしく、声をかけられました。そこから話がはずみ、カンファレンス修了後二人で一緒にお食事しながらいろんなお話をさせていただくことに。彼女からはとても刺激的なお話がたくさん聞けて、まさにHappenstanceに満ちたアークヒルズの初夏の夜でした。

7/15追記:
クランボルツさんによると「Planned Happenstance」という言葉はアメリカでほかの方に商標登録されてしまったとか。「だから私はこの言葉は使えないので、本の題名を"Luck is no Accident"にしたんですよ」と言われてました。


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#日本語版はこちらです
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コメント

コメント&トラックバックありがとうございました。本当にためになり、うれしく思いました。この講演、私も行ってみたかったです。
次回があるなら、絶対参加するぞーっておもいました。

まずは本で、もう少し詳しく学習したいとおもいます。

と同時に、ブログに書くという行動を起こして、本当によかったです。
ちぢこまらないで、動いてみようよ。
まさにそれですね。
今後とも遊びにきます。
どうぞよろしくおねがいします!

投稿: mochiko | 2005/08/08 11:17

>mochikoさん
こんにちは。コメントをありがとうございます。
おしかけトラックバックをさせていただきましたが、少しでもお役に立てたようでうれしいです。
よかったらまた遊びにきてくださいね。
こちらこそ今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: くりおね | 2005/08/08 23:52

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