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2005/06/06

改革がカイカンの地域プロデューサーは元官僚

朝日新聞の土曜日発行の「青いbe」は毎回楽しく愛読しているのだが、たまたま見逃していた時期があったらしく、こんなすごい人の記事を今になってasahi.comのバックナンバーで見つけた。

まちおこし目指して全国行脚を続ける地域改革プロデューサー
上山信一さん(47歳)

「元は霞が関の官僚。運輸省から外務省に出向。マッキンゼーでは大企業の経営再建に実績をあげ共同経営者になった。現在は慶大大学院の教授でもある」上山さんは、現在企業コンサルタントをしながら「行政経営フォーラム」の代表を努める。「行政経営フォーラム」とは、「行政機関、NPO、特殊法人、学校、病院などの各種非営利団体、司法・立法機関の経営改革を推進、支援するための社会団体」である。(同ウェブサイトより)

朝日新聞のインタビュー記事全文は掲記リンク先からぜひお読みいただきたいのだが、とにかく刺激的な言葉が多くあふれているのに驚いた。

生活者が抱えている問題は国では解決できないものばかりなんです。たとえば、近所の中学校で学級崩壊が起きていたら、教育政策をどうこう言う前に、父母が交代で授業参観する方が早い。いま問題のニートだって、昔なら町内のおっさんたちが集まって「お前のとこのガソリンスタンドでバイトでもやらせたらどないや」となったはず。問題は常に個別具体的にあらわれる。本来、政府に解けるはずがないんです。

川崎市の市民ミュージアムにしても、でっかい箱モノを造ったものの、あとは客足は遠のく一方というよくあるケースでね。現場の職員たちは悩んでいた。市役所が親だとしたら美術館は子供。私は家庭教師だけど、市長の退路を断ったんだ。「これは親によるネグレクト虐待だ」と。

市民によく伝わるよう大きくメッセージを載せ、役所の責任も書き、写真も満載で、議事録でモメまくってるやつを全部、市役所の正式な報告書として出させたわけ。議会で問題になって市はあとに退けなくなった。同時にそのリポートを見て「うちにもネグレクト虐待、あるよね」と、ほかでも気がつく。その「変わるプロセス」の普及が重要なんです。

地方自治体の経営改革を実際に進めているその姿勢は、ともすると「どうせ国なんか、役所なんか変わらないよ」と投げやりになってしまう気持ちに喝を入れてくれ、とても励みになった。

「日本企業のコンサルタントをしていると必ず規制の壁にぶつかった。社会改革や行政改革が進まないかぎり、企業の改革もできないと思ったんです」と言い、「中央集権体制で既得権益を得てきたのが国会議員と霞が関。彼らに自己破壊はできない。地方に立脚した人が議論しないかぎり、この国のかたちは変わらないんです。」と訴える。だからこそ地方で個別改革の実績を上げ、他地区への波及をさせていく。何より一番の功績は「行政に『経営』という概念を持ち込んで定着させたこと」。

できること、目に見えることから、仲間を集めて着実に取り組んでいく。
完全な姿が見えないからやらないのではなく、できるところから改革を始めていくことに意義があるのだ。

上山さんが主催する「行政経営フォーラム」は現在会員数546名(2004年4月25日現在)。「各種、公共組織、非営利組織の経営に関与するなんらかのプロ(公務員、議員、首長、非営利団体役員はもとより、コンサルタント、市民運動家、研究者、ジャーナリスト、弁護士、会計士、会社員など)」が集って「行政機関、NPO、特殊法人、学校、病院などの各種非営利団体、司法・立法機関の経営改革を推進、支援」をやっている。そのフロントマンとして自ら地方を飛び回っている彼のパワーには、記事で読むだけでも圧倒され、敬服する。

動物園、美術館、厚生制度、食と農の研究会等々、現在進行形の改革プロジェクトは地域の「まちおこしを意気に感じる現場の役人や、各ジャンルのプロを集めた“ドリームチーム”。それと、やる気のある首長」を巻き込み、続いていく。

こんな人達がいる限り、日本だって捨てたもんじゃない。
改革をあきらめちゃいけない、そう強く思った。

ここからは余談。
上山氏が官僚からコンサルタントへ転身時に相談したという、記事中にある「国鉄からマッキンゼーに転職したプリンストンの同級生」とは、もしかしたら「キャリアショック」「スローキャリア」の著者で現在は組織人事コンサルタントであり慶応義塾大学院教授の高橋俊介氏ではないだろうか。「マッキンゼー時代は給料は役所の3倍。身体はボロボロになったが、スキルは身についたような気がする」とは高橋氏の得意のフレーズだった記憶があるもので。

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コメント

 んー。

 記事中の「現場の役人が秘める職人気質への信頼が根底にはある。」にもっと注目していただければと。

 安月給で苦労して何とか世の中をよくしたいと考えている若手も沢山いることを一応書いておきたいと思います。

 「霞ヶ関は既得権益にしがみついている」というのはまさに彼と同年代以上の一部のキャリアやOBの問題です。

 できれば、頑張っている若手のために「霞ヶ関」と十把一絡げでまとめないで頂きたいものです。

投稿: ハーデス | 2005/06/10 00:24

>ハーデスさん

こんにちは。コメントをありがとうございます。

おっしゃる通りです。
私のエントリでは「霞が関」は硬直していて何もできない、と言っているのも同然ですね。
でも実際は国家公務員の皆さんにもいろいろな方がいらっしゃって、それを十把一絡げに「既得権益にしがみついている」と書くのは失礼なことでした。大変申し訳ありませんでした。

時折厚労省や経産省の報道資料をWebで読みますが、こんなに多岐に渡る資料を作られているんだなあ、とても範囲の広い仕事をそれぞれ専門の方がやっているのはすごいことだなあ、と思っていました。それは去年厚労省数理課の方とミーティングでご一緒した時も感じたはずでした。

「官と民が協力して改革をしている実例があった」のがうれしい、という気持ちで書き始めた記事でしたが、えらそうにわかったような中途半端な評論を書くのではなく、自分の実感ベースでのエントリを書くべきだったな、と反省しています。

これに懲りずに今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: くりおね | 2005/06/10 23:50

 こんばんは。
 すみません、きつい感じだったでしょうか?ちょっと思ったことを書いたつもりだったのですが、やはり文字にするときはもっと気を使うべきだったかと反省しています。

 一方で実はこういうことを無償(というか極めて安い謝金のみで)でやっておられる方がいるということも紹介させていただければと。

 例えば国交省がやっている水源地域アドバイザーなどは先生の名前を見ると、普通なら講演料は相当な額になるしそもそも多忙な方でいらっしゃいます。
 そういう方がほとんどボランティアみたいな形で現地まで出かけて、過疎地域の村おこしにアドバイスをするのです。
 
 でも報道されません。なぜなら、相手が自治体と住民なのでマスコミ発表する必要もないから知られないからです。
 そういう方々もいらっしゃり、もちろん上山さんも含めそういう方々のご協力で政策の一つができあがっている部分もあると考えております。

 いずれにせよ、霞ヶ関ももっとオープンにしていかなければいけないと思っています。

 今は個人的心身の不調+長女誕生による育児で思うように自由な時間がとれませんが、それが落ち着いたらまたいろいろ出かけていきたいと考えております。
 その際は、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 ちなみに・・個人的経験からいうと、学級崩壊を父兄の授業参観で解決できるというのはいかがかと。問題児童の父兄は授業参観など来ないし、その児童を何かしたらストーカーまがいのことをしかねない、というのが現代の世相だからです。
 学級崩壊するような地域は既にコミュニティーが崩壊しているから役所という組織に問題が押しつけられるという実態を無視するのはどうかなーと思います。

投稿: ハーデス | 2005/06/11 02:22

>ハーデスさん

いえいえ、きついと感じたわけではなくて、自分自身やっちゃいけないと思っていること(「属性でひとまとめにして語ること」と「又聞きのひとつの事実を一般論化して語ること」)をするっとやっていたことへの自戒の思いです。
こういうことはちゃんと言ってくださる方がいて、初めて気がつくことが多く、むしろ有り難いと思っています。こちらこそお気を遣わせてしまい、恐縮しています。

地域で無償に近い形でアドバイザーをやっている方々のこと、初めて知りました。おっしゃる通り霞が関でもそういった地味な貢献活動も含めていろんなことをオープンにお知らせされてもいいのに、なんて思います。

学級崩壊の話は、おそらく地域によってさまざまな状況があり、中にはハーデスさんのおっしゃるような「地域崩壊」のつけが回っているところもあるのでしょう。むしろそちらの方が多いのでしょうか。上山さんのおっしゃる方法ですべてが解決するとは私も思えませんが、何とか地域コミュニティが踏みとどまっている地域ではまずそこからやってみる、という提案なのかと理解しました。

体調が本調子でなくご多忙な中、コメントをいただいたことを心から感謝しています。
ご自身やご家庭が落ち着かれたら、きっとまたいろいろとお話お聞かせくださいね。その時を楽しみにしています。

投稿: くりおね | 2005/06/13 00:47

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