“Planned Happenstance”のクランボルツ博士が来日
Planned Happenstance Theory(計画的偶発性理論)で有名なJohn D. Krumbolts氏が来日し、慶応大学キャリアリソースラボラトリの高橋俊介教授や花田光世教授を加えたカンファレンスが開催されるというニュースを聞き、速攻で申し込みました。
詳細はリンク先を参照いただくとして、概要としては
【日時】6月30日(木)18:30-21:00
【会場】サントリーホール(小)
【講師】
第一部:スタンフォード大学John D,クランボルツ先生
第二部:John D,クランボルツ先生、慶応大学キャリアリソースラボラトリー花田光世先生、高橋俊介先生
【テーマ】
第一部:「プランド・ハプンスタンス・アプローチの最新動向と
キャリア・カウンセリング(仮題)」(同時通訳あり)
第二部:「キャリア形成の支援とプランド・ハプンスタンス・アプローチ」(仮題)
というものです。個人的には非常に興味深く、何ともそそられます。
Planned Happenstance Theory(計画的偶発性理論)とは、大まかに言うと
・個人のキャリアは、予期しない偶然の出来事によってその8割が形成される
(数百人の米国ビジネスパーソンへの調査結果による)
・その偶発的な出来事を、主体性や努力によって最大限に活用し、力に換えることができる
・偶発的な出来事を意図的に生み出すように、積極的に行動することでキャリアを創造する機会を生み出すことができる
(偶発的に見えても結果的には計画的に起きたように必然化できる)
という内容です。
目的を決め、綿密な計画を立てて実施していくことが「キャリア開発」だ、という「合理的意思決定モデルとしてのキャリア論」=「計画的決定論的キャリア論」に対するアンチテーゼと言えます。
「計画的決定論的キャリア論」を支持する方々にとっては偶発性は自分の計画を乱す悪であり、排除することで自分のキャリア形成をスムーズにできると思いがちですが、ここでは偶発性は決して『敵』ではないのです。
(このあたりは、高橋俊介氏の「キャリア論」に詳しく述べられています。)
このようなことが実際思いあたる方は、けっこう多いのではないでしょうか。
同じく高橋俊介氏の「キャリアショック」には、「布石を打った人たち」ということで、自分の持っている問題意識と同じものを持っている違う部署の部長と話をし、その後プロジェクトが立ち上がったときに声をかけられた人や、業界雑誌の論文に応募して関連テーマの仕事にひっぱられた人などの事例が紹介されていますが、彼らに共通しているのは、部長へのコンタクトや論文の応募といった行動は、最初から引き抜かれることを狙って取った行動ではなかった、ということです。
仕事を広げていく種まき的な意識で様々に取っていた行動の一つが、結果として彼らのキャリアを進めるきっかけになったとわけで、これはまさに「偶発的な出来事を力に換えた」と言えると思います。
ネットを検索してみると、Biz@niftyというコンテンツでリクルートワークス研究所の大久保所長が書かれた「偶然の出会いがキャリアをつくる」という題名の記事を見つけました。
そこでは、Planned Happenstance Theoryにふれながら、彼が考えているキャリアについてこのように書かれています。
これは、それまで自分に適した職業を見つけることに重点を置いていたキャリア・カウンセラーの概念を根本から覆すもので、「キャリアというものは、あらかじめ“この仕事こそ自分にもっとも適した仕事だ”と意思決定して仕事を選ぶというより、仕事の中で直面する困難や成功や出会いなどから学習することによって変化しつくられていくものなのだ」というメッセージだったのです。
いくら適性や志向を考え抜いて仕事を選んだとしても、さまざまな経験を積んでいくうちに新たな好奇心が湧いてきたり、ある人との出会いがきっかけで予想もしなかった道を歩むことになったりするものです。ですから、「自分のキャリアについて考えることはいいことだが、はっきりしないからといって気に病む必要はない」ということを話しています。
「天職」「適職」を探そうとすることを否定するつもりはありませんが、それが見つからないといってその方の今やっている仕事に価値がないわけでは決してないと思います。
「適職探し」だけに夢中になっていると、ともすると自分の内面だけを見つめ続けて行き詰まってしまいがちです。そんな時には、Planned Happenstance Theoryで提唱している「偶然を力に変える」「そのための働きかけを常に行っていく」という行動を取られてみるのもいいのではないでしょうか。
このカンファレンスは、「キャリア研修センター<企業・個人両方に向けた情報サイト>」さんの「クランボルツ・花田光世・高橋俊介講演会」という記事でも紹介されています。キャリアカウンセリング協会が「慶應の花田先生から、クランボルツを日本に呼んでいるので一緒に講演会やらない、と声をかけられ、トントン拍子でビップ3名も集めた講演会を実施することになりました。」というのが、このカンファレンス開催の裏話のようです。
残念ながら申込は定員になり、現在はキャンセル待ちを受付中とのことですが、先端のキャリア理論に興味のある方はエントリされておいてみてはいかがでしょうか。
参考リンク:
高橋俊介氏のキャリアについての記事がPRESIDENT Onlineの下記特集で読めます。
人と会社の幸せな関係(ONLINE SPECIAL)
関連エントリ:
Luck is No Accident:クランボルツ博士来日カンファレンス(2005/07/06)
7/15追記:
「H-Yamaguchi.net」で山口浩さんが「『Planned happenstance』とリアルオプション」という題名でこの理論についてふれていらっしゃいました。リアルオプションとは「将来の不確実性を前提として、『経営上の柔軟性』の価値を測定するためのツール」で、「偶然はコントロールできないが、偶然に出くわす確率や、出くわしたときにつかまえる能力を高めることはできる。種をしこみ、常に備えることで、不確実性は『味方』になる。」というアプローチと言えるそうです。こう説明していただくと私のように金融に疎い者にもリアルオプションという考え方の一端がつかみやすいような気がします。というわけで、僭越ながらトラックバックさせていただきます。
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コメント
はじめまして。
クランボルツ博士からおじゃましたところ、なにげにスポーツ欄をクリック・・・くりおねさんに興味爆発!!!
ラグビー・前田(秩父宮引退試合行きました)村田でひっかかり、野球・昌では椅子から転げ落ちるかと・・・
順番に各欄見せていただきます(笑)
全然博士でもキャリア話題でもなく、ごめんなさい。
投稿: rapi | 2005/06/10 23:47
>rapiさん
はじめまして、くりおねと申します。
コメントをありがとうございました。
前田くんの引退試合に行かれたんですね。
私は入院中で行けず、とても残念でした。
昌もお好きとは、うれしいです。
いろんな話題を雑食的に書いていますので、他の記事もよろしかったらお読みくださいませ。
それでは今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: くりおね | 2005/06/11 23:23