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2005/05/28

旭山動物園からの緊急メッセージ「レッサーパンダを『見せ物』にしないでね」

さまざまな工夫のある展示で人気沸騰中の、旭川市の「旭山動物園」。
こちらの副園長で獣医さんの坂東元(ばんどうげん)さんが、最近の「レッサーパンダ」に関するニュースについて公式ウェブサイトでメッセージを発信しています。

旭山動物園からの緊急メッセージ「レッサーパンダを『見せ物』にしないでね」

 最近レッサーパンダの見るに耐えないニュースが氾濫しています。  どこのレッサーが何秒立った!レッサー様々入園者が増えた!名前を登録商標!昔のエリマキトカゲのブームを思い出してしまいました。いや,エリマキトカゲの方がまだましだったかもしれません。あれは良くも悪くも野生下でも見られる特徴的な行動だったから。
 野生のレッサーパンダが普遍的に何十秒も直立する,あるいは立って歩く習性があって,これまで飼育下ではその行動を引き出してあげられていなかったのであれば「凄い!」ことです。しかし,よく考えてみて下さい。そうではないですよね。あの取り上げかたは「芸」です。「見せ物」です。というかレッサーパンダは解剖学的にも2本足で立つことは当たり前にできます。むしろ立つことができない個体がいるとしたらその方が問題です。「芸」以下ですね。  レッサーパンダは外を覗きたい,エサをもらえるかもと立ち上がっているだけで,その行為だけを抜き取って「凄いこと」として取り上げています。「ここのレッサーパンダ立たないんだって。つまんない」これがレッサーパンダブームが招いたレッサーパンダの見方です。
私自身、連発される報道に違和感を感じていたのですが、坂東さんのこのコラムを読んで納得できました。

もともとこのブームの発信源は、千葉動物公園のレッサーパンダが二本足で立っている、というニュースです。

2本足で立つレッサーパンダの風太君 千葉動物公園
(asahi.com 2005/05/19)

ここのレッサーパンダがたまたまそういう行動を取っていて、それがニュースになることそのものに対してどうこう言うつもりはありません。問題は、それがこの動物園での話題にとどまらず、現在は「立つレッサーパンダ」という部分だけマスコミなどで取り上げられ関心が向けられる傾向があることだと思います。
昔のエリマキトカゲ、最近では多摩川のゴマフアザラシ「タマちゃん」など、「ブーム」的に「珍しさ」「かわいさ」が消費されることを繰り返してきました。それが今はレッサーパンダになっているだけ。

飼育状態ではこれまで見ることができなかった野生下で見られる特徴的な行動を何とかして多くの人に見てもらう、というのが旭山動物園がこれまで取り組んできた「行動展示」です。それがプールで泳ぐシロクマだったり、アクリルの筒を上下するアザラシだったり、樹上を移動するオランウータンだったりするわけで、決して「物珍しい芸を見せものにする」ことが目的ではありません。
最近ではその「しくみ」だけを真似して取り入れているのではないかと勘繰ってしまうような展示を導入する動物園も増えているようですが(まね?応用?「旭山」に学べ 動物園展示改革(asahi.com 2005/05/17))、旭山動物園の小菅園長は「参考にしてくれるのはいいこと。動物園同士が刺激しあっていかないといけませんから。そっくりまねるのではなく、地域性を加えていって欲しいですね」と言っているとか。

展示方法を真似されることに関しては「まあいいっしょ」と思えても、動物の見せ方そのものが「芸の見せ物」的になることは、旭山動物園の方々としては耐えがたいものなのでしょう。
このブームで「歩くレッサーパンダの展示をしよう」「レッサーパンダを歩かせよう」なんて企画を万が一考えている動物園の関係者がいらしたら、すぐにこの旭山動物園のメッセージを読んでください。
レッサーパンダを取り上げるなら、本来の習性をそのまま表せる、そういう展示ができないかということに、どうか力を注いでください。
せっかく旭山動物園が、見せ物の場ではない「楽しい動物園」「また行きたくなる動物園」のひとつの姿を示してくれているんです。うわべだけでない、動物の「いのち」を見てもらおうという「思い」を、ぜひ旭山動物園から取り入れていただきたいと思います。

5/30追記:
旭山動物園のホームページでの表題が変更されていましたので、こちらのエントリ及びリンク先表示も併せて変更いたします。
変更前:「レッサーパンダを見せ物にするな!」

変更後:「レッサーパンダを『見せ物』にしないでね」

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コメント

はじめまして。

おっしゃるとおりだと思います。
一連の議論をもとに、動物園が各地に存在するということの意味について、考えるきっかけができればよいですね。
(TBさせて頂きました)

投稿: degustation | 2005/06/04 16:33

>degustationさん
はじめまして、くりおねと申します。
コメントとトラックバックをありがとうございました。

本当に、「動物園が各地に存在するということの意味」について議論が深まって、ただのまねではない心のある展示がされるようになるといいなあ、と思います。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

投稿: くりおね | 2005/06/04 23:14

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