COMIC 「監督不行届」 安野モヨコ
西村しのぶの「RUSH」新作をチェックしようとして立ち読みした「フィール・ヤング」4月号で、安野モヨコと編集者の対談が載っていたのを見つけた。テーマは彼女の新作コミック「監督不行届」。それを読み、けっこうそそられたので、書店で見つけた単行本を購入。
実話ベースにアレンジを加えて描かれているカントクくん=オタク夫(なにせあの「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野監督だ)&ロンパース=オタク嫁(安野モヨコがオタクだったとは意外)の生活ぶりは、他人事とは思えないものがあり、いちいち身につまされる。
いつの間にか増えているミニチュアたち、大人買いしまくりあふれるDVDやマンガ、アニソンを合唱できる夫婦。ああ、まったく他人事ではない。
作中カントクくんが歓喜のあまり歌い踊る「ラリホーラリホーラリルレロー」って何だっけ?と聞くと「スーパースリーでしょ」と間髪入れず答えが来て、フルコーラス歌われてしまう。ロンパースとカントクくんは「カムイ外伝」や「破裏拳ポリマー」を二人でコーラスするが、うちは「サスケ」だったり「コンバトラーV」だったりする。ああ。
その一方で、ある意味、これは必然なのかもしれないとも思っている。
世代で語るのはあまり好きではないのだが、私たちはマンガやアニメが成長の過程でごくあたりまえに存在する時代を生きていて、血となり肉となっている世代なのだから、その中である程度マンガやアニメを好きでい続けたりすると、結果として趣味が近く話が合う人間は友人含めてある程度マンガやアニメに詳しい人種が集まってしまう。
もちろん一方で、思春期の取捨選択の過程でこちら系のものをあまり取り入れなかった人達も存在していることも認識していて、そういう人達から見たら私たちはやはり「オタク」と括られてしまうのだろうが、まあそれもやむなし、とあきらめている。私程度がオタクなんて、本物のオタクのみなさんに申し訳ないと思っているのだが。
安野モヨコは、カントクくんと出会う以前にはオタク系男子及び同業者とはつきあったことがなかったという。それは、自分がオタクだから、できる限り普通の男子とつきあっていれば、自分もいつかは中和されて、オタク度の低いモテる女子になれるのではないかと希望を持っていたらしい。
しかし、結婚相手は筋金入りのオタク。そして、彼女は今とても楽なはずだ。作品を見ていても、のびのびとオタよめしている様子が伝わってくる。思い出を共有する中で、自分の好きだったものを共通の話題にできるのはとても楽だから。
巻末に「庵野監督、カントクくんを語る」というおまけがついているのだが、ここではカントクくんの彼女へのあふれんばかりの愛情が現れていて、ここまで受け入れてくれる人だったら、のびのびとできるだろうなあ、と深く納得する。
特に最後の
心の中心では、孤独感や疎外感と戦いながら、毎日ギリギリのところで精神のバランスを取っていると感じます。だからこそ、自分の持てる仕事以外の時間は全て嫁さんに費やしたい。そのために結婚もしたし、全力で守りたいですね、この先もずっとです。
なんてさらりと言っているところは泣けてくる。
ここで語られる安野モヨコの姿と「働きマン」の主人公・松方弘子の姿がなんとなくダブって見えるのは私だけではあるまい。
潔く、男前であろうとする彼女が唯一鎧を脱げるのが夫の前であり、そういう相手だったからこそ結婚しようと思えたのだろう。
これも付録で収録されている「結婚ビフォーアフター」によると、カントクくんは結婚前から13キロやせ、ワードローブも増やし(作中で渋谷西武のアルマーニでお買物する図がある。試着するたびウルトラマンのポーズを取られては、店員もつきそいの妻もさぞいたたまれなかろう)、髪の毛も代官山の床屋で定期的にカットするようになったとのこと。その結果、たけくまメモで「庵野さん何やってんですか」と書かれるようにCM出演するくらいまでバージョンアップした模様。これがマジでかっこいい。これもオタよめとして染まりつつがんばった彼女の教育のたまものだろうか。
4/16追記:
日産TIIDAブログで、カントクくんが出演しているCMの詳細が紹介されています。
庵野秀明さん、ティーダに釘付け(2005/02/17)
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コメント
なるほどなるほど、オタ同志が惹かれあう背景(?)、興味深く拝読させて頂きました(^^)我が家では合唱ではなく、洗脳された私がついタイムボタンシリーズの主題歌の一節を口ずさんでしまうと瞬時にオットがiTunesでその歌をかけます。リクエストしてないよ!
私は前からモヨたん大好きなんです。web日記をずっと読んでいて彼女の作家としての悩みの深さを知っていただけに、あのカントクくんの巻末コメントは嬉しかったですね。
投稿: あひる | 2005/05/27 07:34
>あひるさん
トラックバック&コメントをありがとうございました。
iTunesでの瞬時プレイはすごいですね。カントク同様、アニソン満載のプレイリストなんでしょうね。うーん。
投稿: くりおね | 2005/05/30 23:12