COMIC 「花よりも花の如く」第三巻 成田美名子
成田美名子の能マンガ「花よりも花の如く」最新巻(第三巻)が発売された。
今回は「二人静」題材の「影に形のよりそいて」、「石橋(しゃっきょう)」題材の「秘密」、「淡路」題材の「大王 あん玉 あんこ玉」、それにコミックエッセイ「花を観るのも楽じゃない」を収録。
第一巻では「星霜を髪に戴き」 (「一角仙人」題材)、第二巻では「とうとうたらり たらりら」(「翁」題材)がお気に入りの作品なのだが、今回は「影に形のよりそいて」が私は一番好きだ。
自分と正反対のタイプで苦手な先輩同人(同門の人)と二人で相舞をすることになった主人公の憲人。なかなか息が合わず、悩む憲人に語るじいさまのアドバイスがいい。
「それは 実は自分に一番近い人かもしれない」
「認めたくなかった自分の一部を押し込めて今の自分になった それを人が発揮してたら苦手に思うのは当然さ」
「でも本当は それは自分の一部で 自分の影なんだよ」
このじいさまの言葉を読んで、私はユング心理学の「投影」そして「シャドウ」のことを思い出した。
それぞれの言葉の詳しい意味はリンク先を参照いただきたいが、他人をうとましく思う気持ちが実は自分自身を見ていたからかもしれないと思ってみること、そしてそれは相手も同じかもしれないと思ってみることから、憲人は苦手意識の呪縛から放たれていく。
つまり、他人との闘いではなく、自分自身との闘いだったのだ。その壁にきちんとぶつかり、乗り越えていく憲人の姿がすがすがしい。
ディテールを丁寧に描いて登場人物の心の綾を表現するうまさは相変わらずで、ひとつひとつが上質な短編ドラマを見ているようだ。能舞台の雰囲気も満載で、本当に目の前で見ているような感動が伝わってくる。
メロディ本誌では、憲人がニューヨークの舞台に立つことになって渡米中の話が進んでいる模様。そちらも早く続きが読みたい、とせっかちなファンは思ってしまうのだった。
白泉社 (2005/02/05)
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3つともつぶぞろい
頭脳派体育会系だね
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